辺境禁区 番外編事務所の日めくりカレンダーを破りながら、もうすぐ十月なかばなんだ、と気づいた。いつもは今日が何日なんて気にしてなかったから、自分でもちょっと驚いた。
「甘井、おれ、もうすぐ誕生日なんだ」
「だからなんなんすか」
甘井は首を傾げるけれど、気づいたら気持ちが抑えられなくなった。
「憂太とどこか行きたい」
「アニバで旅行? あの人、そういうことするタイプじゃないでしょ」
甘井はバカにしたように笑うから、おれはムカついた。確かにそうかもしれないけど。
「別にディズニーとかUSJとか言わないよ、温泉とかなら」
破いたカレンダーを丸めてゴミ箱に投げた。
「がっつり墨入ってるから無理じゃん」
カレンダーは見事に外れ、おれは舌打ちした。ほうっておくと井口に怒られるから、しぶしぶ拾って入れ直す。
6873