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    konomimdzs

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    江澄が魏嬰のために雲深不知処に怒鳴り込む話。

    交渉藍忘機は困っていた。魏無羨を道侶に迎えるのに兄や叔父は説得出来たのだが、長老たちが頑として首を縦に振らない。それもそうだろう、彼らは夷陵老祖を無上邪尊の悪鬼だと、真実が明らかになった今でも思っていて。しかも14年前には血の不夜天の後奸邪に惑わされたと藍忘機を厳しく罰した過去もあるのだから。

    「仕方がないよ藍湛。俺はまた何処にでも行く。天下が俺の家だからな。気ままに夜狩をしながらでも暮らすさ」
    「それは私が嫌だ」

    こともなげに振る舞う魏無羨が実は深く傷ついているのを知っている。彼は苦しい時ほど笑うが、遊歴から雲深不知処に帰ってきて10日、その笑顔にさえ陰りが見えてきた。藍忘機は焦りから閉関中の兄に相談した。

    数日後、先触れも無しに江晚吟が藍家を訪ねてきた。
    観音堂の件以来顔を合わせていない魏無羨は気まずい思いをしながら山門で相対する。

    「江澄。元気だったか」
    「なんだ、シケたツラしやがって。それでも江家の一番弟子か?情けない」
    「江晚吟!」

    会って直ぐのあまりの言い草に藍忘機が魏無羨を背中に庇う。

    「お前もだ、藍忘機。全く、家の者を従えることすら出来ないとは。師兄を渡すには心許ない」

    ぐうの音も出ないとは此の事だ。その言葉で江晚吟が兄に相談を受けてやってきたのだと理解した。

    「江澄……」

    藍忘機の背からひょこっと顔を覗かせた義兄を見て、江晚吟は顔を歪ませる。生前の彼は自分より背も高く屈強で負けることを知らない頼り甲斐のある男だった。それが今はどうだ、小さく繊細なその体は少し力を加えただけで砕けてしまいそうに弱々しい。返せる恩があるとすれば、その心と身体を守ってやる事。14年前幼かった自分は今は百戦錬磨の四大世家の宗主。義兄を守る手段と権力を持ち合わせている。観音堂の後直ぐに江家は魏無羨の破門を解き復権させた。そのことは仙門百家に通知している。

    「魏無羨、喧嘩は舐められたら終わりだ。蓮花塢で過ごした日々を忘れたか」

    不敵に口の端を上げる江晚吟の言葉に、昔の楽しい思い出を思いだした魏無羨の顔が緩んだ。蓮の花が咲き誇る池の周りを無邪気に走り回った暖かくも楽しい日々。

    「覚えてるよ。江澄」

    フン!と鼻を鳴らし肩で風を斬って進む義弟の背中を、頼もしく追いかける日が来るとは。魏無羨は嬉しくなって藍忘機の手を引いて『戦場』に向かう。


    魏無羨だって交渉が苦手な訳ではない。喧嘩だって得意だ。しかし今回ばかりは分が悪かった。頼みの綱の藍忘機は口下手な上に長老たちに頭が上がらない。魏無羨は愛おしい夫に家を捨てて欲しくなかった。帰る場所を無くす寂しさを身を持って知っていたから。自分の為にそんな思いをさせたくない。でも彼は言うのだ。藍家に居られないのなら、また遊歴すればいいと。君がいればそれで幸せなのだと。


    「江宗主。忙しい所ご足労いただき申し訳ありません」
    「藍宗主、私も暇ではない。手短に願おう」

    江晚吟の尊大な態度に、蘭室に集まった藍家の長老たちが顔を顰める。今や江家は四大世家の中で1番の勢力を誇っていた。それもそのはず、金家は仙督の悪事が暴かれ未だ若い金凌が宗主の座に据えられたが、彼は江宗主の甥に当り、後見もしている。聶家は元より宗主が頼りなく、この藍家は宗主が閉関している始末。

    「事情は聞いている。藍家の皆様は何故こんな良い話を受けないのか理解に苦しむ。どうやら山に篭って修行ばかりしていて世の流れに着いていけていないらしい」
    「どこが良い話なのだ!……こんな……」

    悪鬼を迎え入れる事が……とでも続けたかったのだろうが、家訓で悪口を禁じられている為、声を上げた長老の1人は黙り込んだ。魏無羨はため息をつく。江澄は長老を睨みつけた。

    「こんな……なんだ?魏無羨は江家の一番弟子で私の義兄だ。愚弄は許さんぞ。家僕ごときが」

    鋭く蔑む目は彼の母親そっくりで、魏無羨は懐かしく義弟を見つめる。彼は本気で喧嘩をしに来てくれたらしい。長老を家僕と言い放った。いいぞもっとやれ。自然と口角が上がるのを慌てて手で隠した。楽しんでいるのは彼だけで、藍忘機も澤蕪君もその叔父もどうしていいか分からずハラハラしつつ見守るしかない。

    「あなた方は、射日の征戦をお忘れか。雲深不知処が焼かれた日の事を。弱ければ滅ぼされる。この十数年、三尊が協力してきたからこそ何事も無く過ごせたが、今その絆は途絶えた。新しい絆を結ぶ時であろう」

    魏無羨は江宗主の義兄で、金宗主の叔父。藍宗主の弟と縁が出来れば三大世家が親戚関係になる。つまりこれは政略結婚に等しいと江晚吟は言っているのだ。

    「藍家は弱くなど……」
    「いいえ。昨今力を付けてきている仙門は沢山あります。四大世家が追い落とされる、または、他の家が台頭し五や六になってもおかしくありません。何故なら平和な世が続いたからです。藍家と言えど盤石とは言えません」

    世情に詳しい藍曦臣が江晚吟の援護射撃をする。平和な世は繁栄をもたらす。四大世家に限らず平等に。金光瑤が展望台を作る為だと仙門から安くない資金を調達したのは、台頭してきた家の勢力を削ぐ為でもあった。

    「藍宗主は閉関中。魏無羨との結婚を認めなければ藍の二の若様も雲深不知処を出ていくだろう。それでやっていけるというなら結構。勝手にすればいい。直に四大世家が三大世家になる未来が見えるがな」

    そもそも、魏無羨が遊歴を止めて藍忘機を誘い姑蘇に共に帰ってきたのは、藍曦臣が閉関し大変な思いをしているであろう藍啓仁を慮っての事だった。ようは長老たちは仕事をする訳でもなく感情だけで口を出しているのだ。これでは藍家の行く末は暗いものになるだろう。

    「過去の誤解は解けたはず。義兄は決して悪鬼などではない。優秀な研究開発者であり戦力でもある。本当は手放したくない。そんな貴重な人財を差し出すと言っているのだ。江家にとって藍家との絆だけではお釣りがきて余りある。あなた方が本当に藍家の行く末を考えているのならば、藍の二の若様と魏無羨の結婚を反対する理由は無い」

    「しかし!邪道を使うものを藍家には入れられん」

    長老たちにとってそこが1番の懸念なのだろう。本音が出た長老に藍曦臣は諭すように語りかけた。

    「なにが『邪道』なのでしょう?確かに彼は鬼道の開祖です。しかしそれを私利私欲の為に使った事は無い。弱きものを守ろうとする彼を私たちは『正道』と言われる力を使って討った。罪無き者を殺したのです。それは『正道』と言えるでしょうか。鬼道は力の形の一種であり、使い様によっては『正道』にも『邪道』にもなる。……我々は間違った。悪い事に使った『正道』の力は『邪道』。逆に鬼道を正しく使った彼は『正道』と言えるでしょう。反省すべきは我々で、彼を『邪道』と蔑むなど烏滸がましいことです。何故あの時、温氏の女子供まで虐げられているのを見て見ぬふりをしたのか。彼の恩人を助けたいだけだという声に耳を傾けなかったのか。『正道』を貫いていれば不夜天の悲劇は起きなかった。我々には償っても償いきれない罪があるのです」

    道を間違えなければ、大事な弟を地獄の苦しみに落とす事も無かった。家訓に拘って大切なものを見落とした結果起きた悲劇だ。藍曦臣は目の前が段々暗くなり身体が重くなるのを感じた。

    「兄上」

    項垂れる兄を弟が支える。まだ本調子ではないのに藍忘機達の為に表に出てきてくれたのだ。

    「魏公子、藍家の長老の無礼を謝罪します。よければ雲深不知処においでいただけるだろうか」
    「もちろんだ」

    魏無羨が笑顔で答え、藍忘機と顔を見合わせると彼も頷く。

    「宗主がこう言ってるんだ、異論はないな?覚えておけ、我が義兄をぞんざいに扱うという事は江家に楯突くのと同じだ。それ相応の報復は覚悟しておけ。ただの下僕が家を潰さないように気を付けるんだな」

    言いたい事は全部言ったとばかりに踵を返すと、江晚吟は蘭室を出ていく。魏無羨は急いで追いかけ背中に声を掛けた。

    「江澄!ありが……」
    「まだだ!」
    「!?」
    「まだ礼を言うのは早い。これで終わると思うな。受けた恩は何倍にもして返すのが江家の流儀だ。知っているだろう。覚悟しておけ」
    「江澄……」
    「全く、あんなクソジジイ共に良い様に言われてるなよ情けない」

    振り返った江晚吟は苦虫を潰したような表情をしていた。よく義弟が照れ隠しにする顔だったと思い出して魏無羨は笑顔になる。

    「……うん」
    「ヘラヘラ笑ってんな。身の程知らずの老害になにかされたら報告しろ紫電で懲らしめてやる」
    「分かったよ」

    姑蘇藍氏は良くも悪くも箱入りで世間知らずな所がある。家訓に背いた訳でも無いのに、年下にあそこまで蔑まれ叱責されたのは初めてだろうから懲りたに違いない。当分は大人しくしているだろう。
    魏無羨は虞紫鳶の事を思い出していた。彼女も家の者を同じ様に庇ってくれた。不器用な優しさ。江晚吟は彼女に本当にそっくりだ。

    「魏無羨。藍忘機に愛想尽かしたらいつでも戻ってこい。ここはお前には合わん。蓮花塢で以前の様に暴れればいい」
    「まだ新婚なんだ。縁起でもないこと言うなよ。でもありがとう」

    礼はいらんとでも言う様に手を一振りすると、江晚吟は足早に去っていった。忙しいというのは本当なのだろう。

    「魏嬰」

    兄を部屋へ送り届けてきた藍忘機に魏無羨は抱きつく。

    「嬉しいよ。江澄が俺たちの結婚を認めてくれて長老たちに口添えまでしてくれて」
    「うん」
    「藍湛と喧嘩したら蓮花塢に帰って来て良いって」
    「……それはダメ」
    「はは。俺たちまだ新婚だからそれは心配ないな」
    「うん」

    その後、まるで江家の力を見せつけるかのように豪華絢爛な嫁入り道具の数々が送り込まれて来るのだがそれは別の話。
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