「おわっ、エッ何、誰?ホ、ホントになんの生き物?」誰が信じられるだろうか。家から出たら知らない土地に居た、だなんて。夢の話だったらどんなに良かっただろうと、ヤカクは途方に暮れる思いで天を仰いだ。
愛しい工房の扉を開き、自然と排外が香るグリダニアへと足を踏み出したはずだった。首に掛けたままのヘッドホンをひと撫でして、今日の夕飯は奮発して料理屋で何か買って帰ろうなんて暢気に考えながら下ろした視界に、違和感が広がっている。普段ならばくすんだ草本に覆われている筈の大地が、薄灰色の、平坦な石材に変わっていた。この石材が、石灰石や粘土、砂利などを水と混ぜ合わせて人為的に作られた、ガレマール帝国でよく使われるコンクリートである事をヤカクは知っていたが、そのせいか、状況を理解すると同時に混乱もした。
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