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    倉庫でございますわ

    @_0011_01

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    POIPOI 32

    エイプリルフール。パルデア着夜鶴さん。

    「おわっ、エッ何、誰?ホ、ホントになんの生き物?」誰が信じられるだろうか。家から出たら知らない土地に居た、だなんて。夢の話だったらどんなに良かっただろうと、ヤカクは途方に暮れる思いで天を仰いだ。
    愛しい工房の扉を開き、自然と排外が香るグリダニアへと足を踏み出したはずだった。首に掛けたままのヘッドホンをひと撫でして、今日の夕飯は奮発して料理屋で何か買って帰ろうなんて暢気に考えながら下ろした視界に、違和感が広がっている。普段ならばくすんだ草本に覆われている筈の大地が、薄灰色の、平坦な石材に変わっていた。この石材が、石灰石や粘土、砂利などを水と混ぜ合わせて人為的に作られた、ガレマール帝国でよく使われるコンクリートである事をヤカクは知っていたが、そのせいか、状況を理解すると同時に混乱もした。
    「一晩でヒトん家の前、勝手に大改装するヤツいる?」
    勢いに任せて顔を上げたヤカクの前には、白いコンクリートの石畳と、その先を続いていく、人の歩みによって自然と踏み固められたような、小道が坂を下るように伸びていた。空はグリダニアから見えるものよりも青く、燦々と輝く太陽はむしろ海都リムサ・ロミンサから見える光に似ているようだった。
    目に入る景色がどれも、ある筈の日常よりも鮮やかで、通り過ぎていく風は、黒衣森よりも軽く、静かだ。耳に入る音は聞き覚えのない鳴き声と遠くの潮騒ばかりで、いっそ煩いくらいだったが、ひそひそと風に混じって運ばれてくる精霊の気配が無いだけで、ヤカクにとっては悪くない、静かな世界に思えた。
    遂に精霊様がヒトにちょっかい出すのやめたのかな、でも一晩で風景変わるのは絶対精霊様の悪戯だろう、それにしては嫌な気配は無いんだよな、と悠長に考え事をしながら、慣れ親しんだ工房に戻り状況を整理しようと振り返ったところで、ようやくヤカクは置かれている状況に絶望をした。そもそも最初に気付くべきだったのだ。目の前の景色が変わったのなら、振り返った景色もそのままでいる筈が無いと。いつでも自分を受け入れてくれていた工房の木戸は無く、拒絶するように固く閉ざされた青緑色のドアが、ヤカクの帰る道を阻んでいた。
    ヤカクは途方に暮れて天を仰いだ。ヤカクが居る場所は、何処かの灯台の麓のようだった。仰いだ天に図々しく割り込む展望台に、あそこから見下ろしたら知ってる場所が見つかるかもなんて、淡い現実逃避を託してから、重く長い溜め息をついた。

    「出勤が遅れたせいでベアティヌ先生に絡まれたら、マジで恨みますからね。精霊様」

    切り替えるよう小さく呟き、首に掛けていたヘッドホンで耳を覆う。
    灯台を見上げたままのヤカクが、自分の足元に知らない生き物たちが集っている事に気が付くまで、あと5秒。
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