白日夢 とある杪夏。
部屋の外が、少し騒がしい気がした。
その日も、双子はいつものように気まぐれに世界を眺めながら、とりとめもなく言葉を交わす。寒くて暗い、極めて無機質な部屋の中は、それでも双子にとって、何人にも侵されることのない理想郷だった──どれだけ世界が、激情に駆られた人々によって破壊されようとも。
双子は、かつてとある科学者が生み出した人間の姿を模した「アシストロイド」だった。──今はもう、まともにその身体を動かすことはできないけれど。
ありとあらゆる人々の怒号を、狂気を、祈りを液晶越しに受けながらも、それでも双子は穏やかに微笑んでいた。人々の号哭は、じっとりと纏わり付く夏の風にするように受け流されていった。
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