『甘い一等星、瞬いて』★ ☆ ★ ☆
リカルド共和国エリントン郊外――
二十年近くを過ごした自宅の中でルーク・ウィリアムズはそわそわした気持ちに支配されていた。座っているのも落ち着かず、無意味に寝室を歩き回ってしまう。
カーテンを開けて外の風景を眺めたら落ち着くだろうかと思い立ち、青いカーテンを引く。夜に囲まれた黒い窓に映る自身の顔と目があった。閑静な住宅街の生活を象徴する灯りが強ばる男の顔を飾りつけていた。
「なんでこんなに緊張してるんだろう……」
情けない声をカーテンの閉める音でかき消す。
そこへ遠くからささやかな水音が重なった。
実は、心がざわつく理由は既に分かっているのだ。
(今、チェズレイが僕の家でシャワーを浴びているからだよな……)
10070