狼🍰×赤ずきん🍑妄想。森の中で切り株に座り泣いてる赤ずきんの子を見かけた焦凍が「ないてるの?」と声をかけた事から二人は出会う。
泣いていた赤ずきんの子、百は「な、泣いてませんわっ」と強がるも、どうやらこの広い森で迷子になっていたらしい。焦凍は百の手を引いて森の入り口、つまり百が住む村が見える所まで連れていってあげる。
助けてくれた狼の男の子に、百は助けてもらった感謝と名前を名乗り、男の子にまた会えるか、と尋ねる。焦凍も名乗り、じゃあ明日もここで待ってるよと伝え別れる。
それ以降、二人は待ち合わせ場所を森の入り口から最初に出会った切り株の場所に変えて、色んな事を共有していった。
森の中を探検したり、百が持ってきた植物図鑑を見ながら実物を探してみたり、お互いの人間の事や狼族の事、沢山の時間を過ごした。
百は頭が良く口調も丁寧で、難しいことを沢山知っていた。焦凍は多少ぶっきらぼうなところはあるが、勇敢で優しかった。出会いの印象も悪くなかったからか、お互いに好意を持つのに時間はかからなかった。
しかしある日、百がいつもの待ち合わせ場所に行くと、先に来ていた焦凍が酷く落ち込んでいる上に、なんと頬が腫れていた。手当をしながら話を聞くと、焦凍の一族が住み処を別の森に変えるのだと言う。
自分はここに残ると言い張っても聞き入れてもらえなかったと、頬の腫れはその時父親殴られたものだと言う。
焦凍はそれでも、父親を説得してみせると百に言ったが、百は悲しそうに首を横に降るものだから、焦凍はショックを受けた。しかし、百は焦凍の手を両手できゅっと握ると、約束しましょう、と言った。
「きっと、大きくなってお父様に認めて頂ければ、焦凍さんもまたここに戻って来ることができるはずですわ…だから今は、少しだけ離ればなれになるだけ、きっとまた会えますわ」
よくよく見れば、百はふるふると唇を震わせながら、泣きそうな表情を必死にこらえて笑顔を浮かべようとしていた。その姿に堪らなくなった焦凍は、空いていた手で百をぎゅうっと抱きしめた。
「約束する、俺、大きくなったら必ずここに帰ってくる…帰ってきたら、百を俺のお嫁さんにするから」
だから、待ってて。そう言って幼い二人はそっと拙い口付けを交わし、日が暮れて焦凍の母親が迎えに来るまで、片時も離れませんでした。
月日は流れ、百は17歳になり、そろそろ成人を迎えようとしていた。
美しく成長した百は、村でもとびきりの美人と評判が高く、言い寄る男は多かった。しかし、焦凍との約束を大事に守ってきた百は、誰の誘いにも応えることはなく、焦凍が見付けやすいようにと、当時着ていた様な赤い頭巾の付いたローブをいつも身に付けていた。
元々博識で色んな知識を知ることが大好きだった百は、錬金術師の道へ進み、今も焦凍との思い出が詰まった森へと材料を採取しに行っている。
そうやって穏やかに焦凍の帰りを待っていた百だったが、いつまでたっても初恋の人に囚われて恋人を作らない百を心配し、とうとう両親がお見合いを勧めてきた。
一度会うだけで良いと言われ、気が乗らないままおめかしをして両親と共にお見合い相手に会いに行った。しかしそこで百は、初恋は実らない、ずっと音沙汰無いんだ、相手だってもう貴女の事を忘れている、貴女は新しい恋に目を向けるべきだと、ずっと考えないように蓋をしていた、目を背けていた事実を突き付けられてしまう。
その日の夜、百はいつもの赤い頭巾の付いたローブを身に纏い、焦凍と出会った森の切り株がある所までやってきた。そしてそっと切り株に腰かけ、目を閉じる。あの時は2人で座っても広かったのに、大きくなった今は、きっと2人で並んで座ることは出来ないだろう。
切り株の年輪をそっと撫で、百は、もう潮時だろうかと、静かに涙を溢した。
「………泣いているのか」
これは、デジャブだろうか。
百は、近付いてくる草を踏みしめる音に、ドクン、ドクン、と心臓が大きく脈打つのを感じた。
振り向きたい。でも振り向きたくない。
信じたい。でも彼じゃなかったら。
「…俺の事、忘れちまったのか、百」
ふわりと、背後からまわってきた逞しい両腕に優しく抱き寄せられ、百はようやく振り向いた。
「焦凍さん…」
目の前には、彼のトレードマークである左右で分かれた白銀と深紅の髪、幼いときはくりっとしていたが今は切れ長で涼やかな瞳、当時は無かった火傷の痕が左の顔に広がっているも、とても整った美しい狼族の男性がそこにはいた。
涙に濡れる百の頬を右手でそっと包むと、焦凍はその目元に何度も口付け、その雫を拭った。そうして百を軽々と横抱きにすると、そのまま切り株に腰を下ろした。
焦凍の腕の中に閉じ込められるように上から顔を覗き込まれ、百はこれは夢なのだろうかとふわふわした気持ちになった。しかし、自身の身体を包み込む焦凍の温もり、いつもより速いお互いの鼓動が、これを現実だと教えてくれている。
「遅くなって悪かった」
「いいえ…良いんです、こうしてまた逢えたのですから」
不甲斐なさを悔やむように眉を下げた焦凍の頬に、そっと手を伸ばして、百はとても美しい微笑みを見せた。
そして二人は分かれた日のようにそっと口付けを交わすと、そのまま寄り添い合い、今までの事を空が明けるまで語り合った。
実は焦凍も、何も好き好んで百の元へ戻るのが遅くなった訳ではない。むしろ、早く独り立ちをしたくて頑張った結果、三男なのに一族の跡取り候補にされてしまったのだ。
冗談じゃない。
その為に強くなった訳ではないと、焦凍はクソ親父こと一族の長である炎司に食って掛かる日々だった。
「待たせてるやつがいる、俺はその為に強くなったんだ」
「相手は人間だろう種族が違う、お互いそれで幸せになれると思っているのか」
「うるせぇよ」
焦凍は炎司に渾身の右ストレートを、かつて自分が受けた場所に喰らわせた。
「俺たちが幸せかどうかは、俺たちが決める…勝手に決めつけるんじゃねぇ」
炎司はその瞳を見て、焦凍はもう腹を括っている、何を言っても無駄なのだと理解した。
そして、二人を見守っていた母親の冷が焦凍に声をかけた。
「焦凍、貴方が待たせているのは、あの百さんと言う子ね?」
「………うん」
「確か貴方と同い年だったわね…それなら、なるべく早く戻った方が良いわ」
「それは、そうだけど…急に、何で?」
「彼女もそろそろ成人でしょう?貴女が惚れ込むくらいだもの、きっと素敵なお嬢さんになっているだろうし…そうなると本人の意思とは関係なく、お見合いをさせられるかもしれないわ」
だから今すぐにでも行きなさい、と背を押してくれる冷に、焦凍はぎゅっとその細くも芯のある母親を抱きしめた。
「お母さん、ありがとう…行ってくる」
「ふふ、大きくなったわね…焦凍、なるべく早く孫の顔を見せてね」
「分かった」
そうして振り向きもせず部屋を出ていった焦凍に、父親の炎司は深いため息をつき、その背を冷はそっと支え、寄り添った。
そんなこんなでようやく再会できた二人。
焦凍は次の日には百の両親に挨拶をしに行き、お見合いの件も焦凍が百と一緒に断りに行き、出会った森に二人で暮らせる家を建て、子宝にも恵まれて末長く暮らしましたとかそんなふわっと設定な話でした。
とりあえずしばらく焦凍は子作りに励むと思う。お母さんにも期待されてるし。何より百と幸せ家族計画のためにちゃんと貯金もしてきたし、仕事もモンスターハンター的なあれで凄腕とかそう言う感じ。パーティーにはデクや飯田君がいます。
ここまで読んで頂きありがとうございます~💦