キャラメル 僕のカバンの中には、常に甘いものが入っている。飴とかチョコとかキャラメルとか、そんな小さなものばかりだけれど、ふとした時に口寂しくなると、それらはちょうどよく僕の心の隙間を満たしてくれるのだ。
「雨彦さん、キャラメルいるー?」
「おお、ありがとさん」
運転中の彼の口に、キャラメルをひとかけら放り込んだ。器用な彼のことだから、助手席の僕の方へ片手を伸ばすことくらい造作もないだろうに。雛鳥のように口を開けた様が少し間抜けでおかしかった。
「最近、よく甘いものを食べてるな」
「そうだねー。なんか小腹がすいちゃうんだー」
適当に誤魔化して、僕もキャラメルを頬張った。ほろ苦い甘さが口の中に広がる。窓の外の街路樹は立派に生い茂っていて、道に濃い影を落としていた。
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