「＄＆＆くん」
その二つ名は本名であるはずなのに、十何年経っても聞き慣れない。顔を上げると女が一人立っていた。クラスメイトだった気がするが、それは少し離れた場所にあと二人立っていたためようやく思い出せた。
会う約束をしているペンギンやシャチを、彼等が勤める病院の近くの広場で待っていた。目の前には噴水があって、その周りを円をかいて木々が植えてありベンチが置かれている。メインストリートからほど近いこの場所は、人々が行き交い笑い合っていた。そのうちの三人がこちらを見ている事にも気づいていたが、本に集中しているふりをして無視していた。話し掛けてほしくなかったから顔も上げなかったのに、と内心ごちる。
「＄＆＆くん、聞きたいことがあるの」

ロゾ日記side:Law④○月4日くもり
ゾロ屋の施設に行く際、コラさんについて来てもらった。おれはまだ未成年だから、門前払いされるだけだろうし、コラさんは養護施設を世界で幾つか運営し、この国にも持っているから、そこに上手くゾロ屋を引き込むことが出来るだろうとの目論みだ。世界的に有名な養護施設Mi corazonの代表だ、関係者で知らぬ者は居ない。きっと、ゾロ屋の先生も快く話を進めてくれるだろう。
ゾロ屋は、知らない大男が来たものだから、ひどく驚いていた。コラさんは顔がこわい。ただ、おれはコラさんがいい人だ、と言うことを懇々と説明すると、緊張が解れたのか、コラさん！と呼ぶようになった。そして、トラ男はコラさんがすげェ好きなんだな、とも言われた。間違いではないが、改めて言われると少しばかり気恥ずかしい。まぁ、コラさんも嬉しそうにしてたから良しとする。