御馳走の作り方【御馳走の作り方】
「また鰯かよ! ボクは魚は嫌いだって言ってるだろ!」
「お前らの分はついでだ。ヴァル様が『同じ釜の飯を食わせたい』と仰るから作ってやっているが……まさかそのご厚意を無下にする訳ではないだろうな?」
「いや美味しいのよ? 美味しいんだけどこう鰯続きで喜ぶのはアンタのご主人様ぐらい……って……うん?」
隣の席から此方を見やり、プリニー帽の少女は首を傾げた。此処は泣く子も黙る魔界のどん底、地獄。仲間たちとの賑やかな食卓に、にわかに静寂が訪れる。
「なんかヴァルっち……具合悪い?」
「……お口に合いませんでしたか?」
「なっ、なんのことだ。美味いぞイワシは。味付けも申し分ない」
そう言った割に、皿の上の鰯ソテーはほとんど減っていなかった。誤魔化すように一口、その身を口に運ぶ。バターの香ばしさは勿論のこと、香草が鼻を抜け、臭みは消えている。安価な魚は良い料理人により工夫され、風味豊かに調理されていた。
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