神無月の まるで美術館のようだ。
三ツ谷は館内に足を踏み入れた瞬間、そう感じた。彼もきっと同じではないかと、隣に立っている大寿を少し見上げた。
「動く絵画みたいだね」
額縁装飾が施されており、それぞれに『〇〇の景』と名が付けられている展示方法がそう思わせるのだろうか。他の水族館のように、全ての水槽に解説がついているのではなく、所々にメニューボードが置いてあり、チョークを使ってイラストが描かれていた。水槽と目の前に置かれているボードを交互に観ながら、三ツ谷は「この水槽、何でこの名前なんだろ」と、特に答えを求めている訳でもなく呟きながら歩を進めていく。
「あっ、見て大寿くん!鮫!!カニに踏まれてる!!」
深海ゾーンと名付けられているコーナーでは他より少し大きめの水槽の中に、タカアシガニとトラザメが数匹棲んでいるようだった。
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