【夏五】めんどくさい 誰のせい、ということはない。
しいて言うなら、灰原が自分の力量を見誤ったせいか。たくさんの荷物を両手いっぱいに抱えて、結果足元が疎かになり、転がっていた鍛錬用の竹刀に躓いた。
…それを言うなら竹刀をそこに放置していたやつが悪いのだが、本当はそんなことはどうでもいいのだ。
とにかく、躓いた灰原が前にいた七海にぶつかり、その七海が、さらにその前で丁度水を飲んでいた夏油にぶつかった。
結果、夏油は盛大に水をぶち撒けてしまったのだ。たった今着替えたばかりのTシャツに。
「七海、余分に着替え持ってたよね?」
ぐっしょりと濡れてしまったTシャツをしかめっ面で抓みながら尋ねてきた夏油に、思考が固まった。
それが、今の状況である。
2000