晴れ間までの連想ゲーム豪雨 快晴
扉を閉じれば、滞留していたらしい湿気を纏った空気が身体にまとわりついてくる。しかしそれが外よりもましだと思えるのは、それほどまでに空を覆う雨雲が分厚いせいだろう。大学と自宅というそこまで長くもない距離を歩いただけで、つま先からひざ下までがしとどに濡れてしまうくらいには。
今この身が欲しているのは、食事でも休息でもなく風呂だ。雨水という決してきれいではないものにまみれてしまった身体を洗い流し、さらには冷えた身体を温めることが必要なのだ。そんなのは帰宅中に出ていた結論でもあるため、真っ先にバスルームへと足を進める。進めようとした。
些細な、しかし確かな違和感。ベリタス・レイシオは天才ではないが、決して愚鈍でもない。その功績から人に命を狙われるようなことは多々あったし、愚鈍の治療のために致し方なく武力行使をすることもあった。つまりは、一般人よりはそういった厄介ごとの対処に長けているのだ。この家に、一人暮らしであるはずのこの場所に、自分以外の誰かがいることに気付けるくらいには。
6511