Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    金魚飴

    @kingyoameya

    性癖を投げます
    スタンプ開けたり閉めたりします
    https://www.pixiv.net/users/3183406

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🍔 🍜 🍣 🍙
    POIPOI 65

    金魚飴

    ☆quiet follow

    AIのべりすとに書いてもらったオリジナル掌編
    小学校の国語の教科書っぽさがある

    追憶渡辺将也は、野口洋介の家に下宿している書生であった。洋介は市会議員で、なかなかの資産家である。数年前に妻を亡くしてから、独り身を貫く男やもめである。将也は、その家に住み込んで、雑務を手伝いながら大学に通っていた。いつものように将也が大学から帰って来ると、居間に洋介の姿はなく、二階の書斎を覗いて見ると、洋介は机に向かって何か書き物をしていた。
    「何を書いているんですか?」
    将也は何気なくそう聞いた。すると洋介は筆を止めて顔を上げ、少し照れたような表情を浮かべた。そして小さな声で答えた。
    「小説だよ」
    「小説? 珍しいものをお書きになっていますね」
    「ああ……。最近、ちょっと興味があってね」
    「どのような話なのですか?」
    「まだ途中だから、秘密だ……」
    「でも、だいたい想像できますよ。奥さんのことを書くんでしょう?」
    将也の言葉を聞くと、洋介はまた顔を赤くした。図星であったのだ。「どうしてわかったんだい?」
    「だって先生、奥さんの写真を眺めながら書いていらっしゃるじゃないですか」
    「うむ……。まあな」
    「読んでみたいです。僕にも見せてください」
    「だめだ。未完成なんだから」
    「じゃあ、いつ完成するのです?」
    「そうだなぁ……、君が大学を卒業するまでには完成させるつもりだが」
    「それなら、あと二年くらいですね。それまで楽しみにしておきましょう」
    「おい、あまり期待しない方がいいぞ。私は素人だからな」
    洋介は苦笑しながらそう言った。

    それから半年後、洋介は未だ原稿用紙にペンを走らせていた。洋介は市会議員の仕事からかえると、寝食も忘れて小説を書き続けていたが、最近どうも調子が悪いらしく、彼は首を傾げているばかりである。やがて洋介は大きな溜息をつくと、煙草を取り出して火をつけた。
    「先生、大丈夫ですか?」
    「ああ……。心配ないさ」
    将也の問い掛けに対して、洋介は弱々しい笑顔を見せた。
    「お疲れでしょう。今日はこれくらいにして、もう休まれたらいかがです?」
    「しかし、もう少しで書けそうな気がするのだが……」
    「無理をして体を壊されたら元も子もないですよ」
    「うーん……。そうだな。では、続きは明日にしよう」
    「それがいいと思います」
    将也の説得に応じて、洋介はようやく筆を置いた。そして寝室に向かうと、布団の上に倒れ込んだ。

    翌日、仕事から帰ると、洋介は再び机に向かい始めた。彼の頭の中では既に完成した物語のイメージが出来上がっているのだが、それをうまく文章にすることができない。そんな状態が続いていた。
    「先生、夕食はお召し上がりにならないので?」
    様子を見に来た将也が尋ねた。
    「ああ……。先に済ませてくれないか」
    「わかりました」
    将也が部屋から出て行くと、洋介は筆を握ったまま再び大きな溜息をついた。亡き妻のことを思い浮かべながら書き始めた小説だったが、なかなか思うようにいかないものだ。妻への想いが消えることはないが、半年の間に自分の中で彼女の面影が薄れていくような感覚があった。それは寂しいことであるし、罪悪感もある。
    「先生」
    突然襖の向こう側から声をかけられて、洋介は驚いて顔を上げた。
    「何だね、将也君」
    「お客さまが見えておりますけど……」
    「誰だい?」
    「織部様とおっしゃっています」
    「織部……まさか、美代子か?」
    その名前を聞いた途端、洋介の声色が変わった。美代子は、洋介の妻、美和子の姉である。洋介は、美代子のことが苦手だった。彼女は洋介のことを毛嫌いしており、会うたびに嫌味を言うからだ。洋介の方も、彼女に好かれようと努力したことがない。しかし、来訪を無視するわけにもいくまい。洋介は立ち上がると、足早に玄関に向かった。
    「ご無沙汰いたしておりますわね」美代子が微笑みを浮かべて挨拶をした。その横には和服姿の若い女性が立っている。
    「君は……久枝さんかい?」
    「はい、覚えていてくださったのですね」
    「もちろんだとも。大きくなったねぇ」
    「ありがとうございます」
    久枝は美代子の娘である。年齢は二十歳そこそこであろう。その若さにもかかわらず、既に落ち着いた雰囲気を持っていた。
    「立ち話も何ですから、中へ入りませんこと?」
    「そうだね。上がってくれ」
    洋介は二人を居間へと案内すると、将也が茶を人数分運んできた。
    「ところで、何か用かね?」
    「ええ……。実はお聞きしたいことがありまして」
    美代子は身を乗り出して言う。
    「何だね?」
    「あなた、最近小説をお書きになっているとか……」
    「おや、そのことをどこで聞いたんだね?」
    「娘に聞いたのです。娘は、そこの将也さんから聞いたそうですけれど」
    「将也君?」
    洋介が目を向けると、将也は頭を掻いた。
    「すみません、街中でばったり久枝さんとお会いして、話が弾み、つい先生の執筆活動について話してしまいました」
    「いや、かまわないよ。別に隠していたわけではないからな」
    「それで、ぜひ拝見させていただきたいと思いまして」
    美代子が言った。
    「……すまないが、完成するまで誰かに見せる気はないんだ。それに、私はまだ納得できるものが書けていないんだ」
    「あら、そうですの。でも、私だけではなく、久枝も読んでみたいと言っておりますのよ」
    「そうか……」
    「先生、ついでに僕からもお願いします。読ませてください」
    将也まで頭を下げはじめた。
    「うーん……」
    洋介は腕組みをして考え込んだ。正直言って、未完成かつ稚拙で推敲も足りていない素人原稿を晒す勇気がなかった。とはいえ、ここまで頼まれると断りづらい。洋介は少しの間思案していたが、やがて諦めたように溜息をつくと、「わかった」と呟いて、書斎に原稿を取りに行った。「まあ、楽しみですわ。ねえ、久枝、それに将也さん」
    「はい!」
    「僕も楽しみです」
    三人は口々に言い合った。しばらくして、洋介が再び居間に戻ってきた。彼は膨大な枚数の紙を持って、美代子たちの前に立つ。
    「これが、私が今書いている作品だ」
    美代子、久枝、将也の三人は渡された原稿を読み始めた。最初は黙々と読み進めていた三人だが、徐々に表情に変化が現れた。まず、美代子が笑い出した。そして将也の顔からは笑みが消え、真剣そのものといった様子になった。久枝は、困ったように眉を下げ、洋介の様子を窺っている。
    「……客観的に見て酷い出来なようだな」
    洋介は苦笑した。その間も美代子は笑い転げている。
    「あの、おほほ、失礼、主人公のモデルは美和子ですの?」
    美代子の質問に対して、洋介は一瞬戸惑ったが、すぐに答えた。
    「ああ、そうだ。亡くなった妻をモデルにしている」
    「ああ、やはりそうなんですね。おほほ」
    「そんなに可笑しいかい?」
    「いえ、そんなことはありませんわ。ただ、あまりに赤裸々なので、美和子さんがこの場にいたらどう思うかと思ってしまいましたの」
    「む……」
    「おじ様! これでは駄目ですよ。書き直して下さい」
    それまで大人しくしていた久枝が大きな声を出した。
    「どうしてだい? 私はこの作品を書き上げるために、ずっと頑張ってきたんだ」
    「いいえ、駄目です。美和子さんはもっと繊細で、奥ゆかしい人でした。こんなにあけすけな女性ではありません。あなたが美和子さんを誤解しています」
    久枝は洋介に詰め寄った。
    「そうは言われても、私の妻はこういう人間だったんだ。それとも、久枝さんは美和子のことを知っているのかい?」
    「知っています。美和子さんは優しい人です。だから、お祖父様にもお祖母様にも愛されていたのです。それに、美和子さんはお料理もお裁縫も上手でした。それは、全てあなたのためです。美和子さんのそういうところを、あなたは理解していない。それが問題です」
    久枝は熱弁を振るう。洋介は久枝の言葉に圧倒され、言葉を失っていた。そこに、将也が口を挟む。
    「あの、先生。僕はこの作品を読んで、感動しました。先生が奥さんの話をするとき、いつも楽しそうだったことを思い出しました。きっと、これは素晴らしい物語になると思います。ですから、このまま書き上げて下さい」
    「将也君……」
    「お願いします!」
    将也は深々と頭を下げた。しかし、久枝がそれを遮る。
    「将也さん、あなたは何もわかっていません。貴方は先生の家に下宿しているだけの書生さんでしょう?そんな方に、美和子さんの何がわかるというのですか?」
    「そうかもしれません。でも、先生がどれだけ奥さんを愛していたのかはわかります。それに、先生の作品を読むことで、僕にも先生の奥さんのことをより深く知ることができるはずです。ですから、どうか先生の書く作品を読ませてください」
    「将也君……。わかった。君にそこまで言われたら仕方がない。わかったよ。もう少しだけ待ってくれ」
    久枝は不満そうだったが、それ以上何も言わなかった。そして、美代子は最後まで笑い続けていた。

    二人が帰ってから、洋介は原稿を片付け、書斎に戻ろうとした。しかし、将也に呼び止められて振り返った。
    「先生、今日はありがとうございました。とても面白かったです」
    「いや、私こそ、皆から貴重な意見を聞かせてもらったよ。本当に感謝する」
    「……あの、久枝さんが言っていたことは気にしないほうがいいですよ。彼女も、ちょっと気が立っていただけだと思います」
    将也は気遣わしそうな顔で言う。洋介はそれを聞いて、苦笑した。
    「大丈夫だよ。むしろ、色々と考えさせられた。私の見ていた妻の姿は、ほんの一部に過ぎなかったのだな。久枝さんの言うとおり、私は彼女のことをよく分かっていなかった。しかし、私は私の中にある妻との思い出を大切にしたいと思っている。だから、作品を書くことを止めるつもりはないよ」
    洋介の決意を聞き、将也は微笑んだ。
    「応援しています」
    「ああ、頑張るよ」
    洋介も笑顔で応えると、今度こそ部屋に戻っていった。

    それから、洋介は執筆に没頭した。将也の励ましを受けて、ますますやる気が出たようだった。久枝は時々洋介の家にやってきて、洋介の原稿に対して文句を言い続けた。しかし、洋介はむしろそれを好ましく思っていた。洋介の知らない妻の一面を、久枝が教えてくれるからだ。洋介が今まで知らなかった美和子の様々な表情を知ることができる。洋介にとって、久枝はなくてはならない存在になっていた。

    洋介は、妻との思い出の詰まった家の中で、妻への想いと向き合いながら作品を書き続けた。やがて、その作品は完成した。表題を決めあぐねていた洋介に、将也は『追想』を提案した。洋介は、それを採用した。
    「先生、とうとう完成されたのですね。おめでとうございます」
    将也が祝いの言葉を述べた。
    「ああ、君のおかげだ。君がいなければ、この作品は生まれていなかっただろう」
    「いえ、先生の力ですよ」
    「いいや、君の後押しがなければ、この作品を書き上げることはできなかった」
    二人はお互いに謙遜しあった後で、どちらからともなく笑い出した。
    「それで、先生。この作品を出版されるんですか?」
    「そうだな。まだ考え中だが、いずれは出そうと思う」
    「きっと、多くの人に読んでもらえると思います」
    「だと良いのだが……」
    「先生、自信を持って下さい。この作品には、それだけの価値があります」
    「そうかな?」
    「はい! もちろんです!」
    将也は力強く言った。洋介はその言葉を信じることにした。
    「ところで、将也君はどうするつもりなんだ? もうすぐ卒業するが」
    「はい、出版社に就職しようと思っています」
    「そうか、頑張ってくれ」
    「はい、ありがとうございます」
    将也は嬉しそうに答えた。
    「先生も、これから大変でしょうが頑張ってください」
    「ありがとう。君も、残りの大学生活を楽しんでくれ」
    「はい」
    将也は元気良く返事をした。洋介は、将也の将来が楽しみになった。将也は、自分の未来をしっかり見据えている。それは、将也が成長した証なのだから。
    「では、僕はそろそろ失礼します。また来ますね」
    「ああ、いつでもおいで」
    将也は笑顔を見せて去っていった。その後姿を見ながら、洋介は将也の成長を感じていた。
    「将也君なら、きっと成功するだろうな……」
    洋介はそう呟くと、書斎に戻った。そして、机の上に置いてある原稿を手に取る。
    「さて、次はどんな話を書こうか……」
    洋介は、次回作の構想を考え始めた。

    ―――完―――
    Tap to full screen .Repost is prohibited