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    メルズ前沼。

    ユニバのメルズ前に沼った哀れな奴です。
    投稿するのは小説が主。

    リクエストは申し訳ないです、金銭目当てで書いてる訳じゃないので受け付けてません💦

    二次創作物になってるんで、中には地雷を踏む可能性はあります。
    中の人の名前が出る話には鍵掛けてるので、もし読みたい方はDM飛ばしてくれたら送ります!!
    Twitterでは@meruzu_numa_でやってるので、そっちからリクエストどうぞ!!DM飛ばしてくれたら読みます!!

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    メルズ前沼。

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    【化け物の夢】
    フォロワーさんからのリク小説です!
    此方の絵をイラストに上げてます。
    本人様からの掲載許可は済んでます!

    #サイバー一号
    cyber1

    【化け物の夢(サイバー一号)】化け物の夢(サイバー一号)












    ふぅ······と煙管(きせる)から吐いた白い煙を見ながら、私は静まり返った森の中、ぽつんと佇む日本家屋の縁側で足を組んで外を見る。



    季節は、もうじき冬を迎える。



    動植物は冬支度を既に終え、これから春まで長い長い眠りにつくのだろう。






    「今日は寒いな」






    私の問いに答える者は、誰も居ない。


    それもそうだろう、私の家を訪れるのは私の姿を見ても驚かない野生の動物や、食事を運ぶ為にやって来る下女だけなのだから。






    【森の奥にある日本家屋には近付いてはならぬ】






    それがあの村に古くから伝わる言い伝えであり、私を此処へ閉じ込めた連中が広めた掟。



    “ 化物 ”



    なのだと幼い私に言ったのは誰だったか?
    分からない程に私は長い年月をこの家で過ごしている。



    私が生まれて直ぐ、親は私のこの醜い姿を見て私を殺そうとした。
    だから、喰らった。


    人は私を化物と呼び、そして同時に鬼と呼ぶ。






    「あぁ、本当に寒い」






    人を欲して喰らう度に満たされる、飢え。


    けれどそれは最早私が人間では無いと言う確かな証。
    太陽の下に出られない、人間としての寿命さえ迎えることは出来ず、私はただ毎日を過ごしている。






    「あぁ、そう言えば今日は年に一度の食事の日か」






    村から下女がやって来る日は、決まって村の鐘が鳴る。






    カーン、カーン、カーン······。






    三回鳴らすのは食事を運ぶ下女に対しての労りか、それとも······“ 運ばれて来る人間 ”への弔いか。






    「まぁ良い」






    年に一度、食事を私の元へ運ぶ代わりに村への干渉はしない。


    それがあの村と私とで決めた昔からのルールであり、掟。


    やがてやって来るであろう食事を出迎える為、私はその場から立ち上がる。






    「今年はどんな罪人がやって来るのだろうな」






    運ばれて来るのは何時だって人を殺したり、何か大罪を犯した人間達ばかり。
    そんな罪人達を喰らい、糧にするのが私と言う存在だ。



    そろそろ到着するだろうと思っていれば、淡々とした下女の声が玄関から聞こえて来る。






    「お食事を持って参りました」


    「そこに置いて行け」






    何時ものやり取り、変わらない会話。



    頭を下げた下女が一旦外に出て、次に罪人を連れて来る。
    縄で縛り、抵抗すら出来ないように鞭で打たれた身体を押しやって私の傍から消える。



    何時もなら、それで終わるはずだった。



    だが、連れて来られた“ 罪人 ”を見て私は下女に口を開く。






    「おい、コレは何だ」


    「今年の食事で御座います」


    「私にはコレが人間の子供にしか見えないが?」


    「今年は罪人が居りませんので、孤児のこの者が選ばれました」






    孤児など、使い道はこれくらいしか無いでしょう?



    そう言って立ち去った下女に、私は何も答えない。
    干渉しないと定めた掟なら、私からは何も言うことは出来ないのだから。



    ただ······傷だらけのこの子供を見て、酷く哀れな奴だと思う。
    好きで孤児となったわけでも無く、村からは見捨てられた存在。


    だから私は······ほんの少し、情が湧いたのだろう。
    気付けば声を掛けていた。






    「お前、私の元で住んでみるか?」






    その言葉に、痩せ細った小さな少年はただ小さく頷いた。









    それから幾年が過ぎ、私と少年の奇妙な生活が続いて行く。
    老いない私と、年を取り少し大きくなった少年。


    少年は私の姿を見ても恐れる所か、私の姿を見付ける度傍に寄っては好奇心に満ちた目で私にあれこれ話す。






    「いち兄!庭にタヌキ居た!」


    「餌付けはするなよ、自然の生物だ」






    分かった!と太陽の元に駆け出す背中を、日が当たらないようにと閉め切られた部屋から見送る。


    少年は、私に一度たりとも太陽の当たる日中に私を外に出そうとはしなかった。
    外に誘うのは、決まって陽が完全に傾いてからだった。


    少年は私を「いち兄」と呼ぶ。
    過去に一度少年から名前を聞かれ、私が数字の1と呼ばれていたと教えた所、何を聞き間違えたのか「いち?ならいち兄だ!」と嬉しそうにそう呼んだ。


    それ以来私の呼び名はいち兄で、少年の名前は太陽を表す「三太(さんた)」と付けた。












    そんな三太との生活が、ある日突然終わりを告げる。






    「いち兄っ!!!!いち兄っ!!!!」


    「三太っ!!!!」






    村の畑が不作続きなのは私と言う化物が居るからだと、謂れの無い出任せを広めた村の連中によって、私達の住む家に火が放たれた。



    私の苦手とする、太陽の出る日中に。



    火を放った村人はその場で殺したが、瓦礫の下敷きとなった三太が私に向かって手を伸ばす。






    「いち兄っ!!!!熱いよいち兄!!」


    「三太っ!!!!待ってろ今すぐ助けてやる!!」






    だが、私がこの場から離れれば······。






    「っ!!!!三太!!!!」






    勢い良く駆け出し、瓦礫の下敷きになっていた三太を助け出す。






    「っ!!!!いち兄身体っ!!身体がっ!!!!」


    「聞け、三太······お前は、生きろ」


    「いやっ、嫌だよ!!いち兄が居ないのは嫌だ!!!!俺何でもするよ!?食事だって狩りだって!!!!いち兄が俺喰って元気になるならっ······!!」






    泣き叫ぶ三太の言葉を聞きたく無くて、強く身体を抱き締める。


    身体は、もう既に太陽の光を浴びて限界を迎えている。
    だが、それでも······私には大事なことがある。






    「三太、お前が生きてくれるなら私はもう良い。もう充分私は生きたよ······お前が私を恐れずに傍に居たこと、笑ってくれたこと、手を握ってくれたこと······全て、覚えているから」






    背中が、身体が、太陽の光で焼けて行く。



    三太の身体を森へと突き飛ばし、私は叫ぶ。






    「生きろ三太!!!!村人に捕まらずに逃げろ!!!!私はっ······後で行く!!!!」






    行け、と泣き叫びながら森へと消えて行った三太を見送り、私は遂に地面に崩れ落ちた。


    太陽が、私の身体を焼いて行く。
    痛みはとうに過ぎ去って、意識すら遠くなって行く。


    空を見上げれば青く、あぁ太陽とは、空とはこんなにも広く······温かいのだと初めて知った。






    「あぁ······温かい············太陽の光は······これ程までにーー······」
























    俺は三太。


    この名前は、昔俺を育ててくれた人が付けてくれた大切な名前。


    住んでいた家を焼かれ、大切な兄を奪ったあの村の連中は正直今でも憎い。






    「三太!!お前に客だってよ!!」


    「客ぅ?俺に何か用事でもあんのか······?」






    いち兄に助けられて、俺は遠くへ逃げた。
    その時に親切な人が店でまだガキだった俺を雇ってくれて、今ではこの町一番の煙草屋を経営している。


    店には外国から仕入れた物珍しい煙草や、数は少ないが見た目で買う人達をターゲットにした煙管も販売している。






    いち兄が、良く好んで吸っていた煙管も販売目的では無いが店の中に飾っている。










    「はいはーい、お客さん何でしょ······」






    ぴたりと、俺の身体が縫い付けられたように止まる。


    目の前の“ 客 ”は飾られてある非売品の煙管を指差し、一言告げた。









    「コレが欲しい。昔、良く吸っていた」









    その瞬間、俺の目からは涙が溢れ、客の前だと言うのに羞恥心も忘れて泣き叫ぶのだったーー······。
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