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    nonbirishinkou

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    nonbirishinkou

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    左+銃、お互いのことが結構好きな酔っ払いの二人

     火貂での大きめの仕事が終わり、その解放感から左馬刻が俺を呼び出した。顔を合わせるのは実に二週間ぶりだった。そろそろ連絡を入れようかとか飲みに行きてえなとか思っていたし、仕事の概要を聞いておきたいという建前を乗っけて二つ返事でオーケーした。で、路地のちょっと奥まったところにある焼肉屋で山ほど飲み食いして奴は見事にべろべろになった。いつもは楽しく酔っ払う程度だったが、今日ばかりは珍しくはしゃいでいたのかもな。一方の俺は明日も仕事があるからほどほどに。唐突な誘いだったから許してくれや。
     タクシーを拾うために千鳥足の左馬刻を引きずりながら大きな通りまで歩く。左馬刻は俺のスーツの右の肩パッドをぎゅっと握ってバランスを取っていた。形が歪むからやめろと言っても聞かないのでもう好きにさせている。時々左馬刻の発するあーとかうーとか赤子みたいな奇声に、俺はそうだなとかうんうんとか適当な相槌を打つ。
    「私ユウトの上から一番目に好き!」
    「なにそれ、俺もナナのこと一番目に好き!」
     酔っ払ったカップルの馬鹿みたいな会話が横を通り過ぎていく。それを左馬刻が堪えきれないとでも言うように頭を揺らして笑う。左馬刻の動きに合わせて掴まれたスーツと俺の右腕がぶんぶん振れた。
    「ッハハ!」
    「おいおい、お前そんな笑い方して吐くとか言うなよ」
    「吐かねえよ! ハハッ! はぁー……」
     酔っ払いの唐突な笑い声は唐突に止む。シンと静まり返る夜道に二人分の足音がざりざり響いた。
    「俺はぁ、銃兎のこと下から六番目に好き」
     声には笑いのニュアンスがたっぷり含まれていた。思いついた端から適当に言ってやがるのが伝わる。下から六番目、か。
    「へぇ、結構好かれてるんだな」
    「あ?」
    「だってお前の好きな人って妹さんにお袋さん、火貂の親父さんに、理鶯に俺だろ? なら十分上位だ」
     お前に言ったって認めないだろうけど、あとはかつてのチームメイトたちも好きな人だろうな。それを加味したって俺は十分左馬刻に好かれている人間のうちに入るだろう。ならば下から六番目だろうと上等だ。いずれにせよ余裕のトップテン入りなのだから。
    「へぇー。俺、お前のこと結構好きだったんだな」
    「そうそう、お前俺のことなんだかんだで好きなんだよ」
    「んじゃ銃兎にとって俺は何番目くらいに好きなんだ」
    「んー……、まあ、五本の指には入るな」
    「おー。汚職警官サマの五本の指に入るたぁ光栄だぜ」
    「だろ」
     左馬刻が笑う。左右に揺れながらふふっと上機嫌そうに笑う。そのリズムが肩越しに伝わって、俺も揺れながら笑う。馬鹿みたいでいい夜だなぁと思った。
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    nonbirishinkou

    PAST左+銃の左馬刻さまとささらさん
     喫煙所の扉が開いて、見知った白髪が入ってきた。俺の姿を認めると、眉を困ったように寄せて「禁煙中じゃねーんか」と小さく笑う。
    「禁煙中やで。吸うてへんもん」
     ぱっと手のひらを見せて煙草もライターもありませんよーってアピールすると、左馬刻はどーだかとこれまた小馬鹿にするように首を傾げる。煙が俺に来ないように配慮してか少し離れたところに腰掛け煙草に火をつけた。ええけどね、煙くらい。むしろ欲してるくらいやけどね。口寂しくてジャケットの内ポケットに仕込んだ飴ちゃんを取り出し口に放り込む。
     何か喋り出すかと思ったけれど、左馬刻は黙ったままガラス越し、喫煙所の向こう側にいるチームメイトを眺めていた。各ディビジョンの二番手が集まって何やら盛り上がっている。そこにはもちろん盧笙もおって、左馬刻のチームメイトである入間さんもおる。年末の歌合戦以来、仲良くなったようだった。仲良く、というか学生に勉強を教えてるみたいやな。あそこは小説家も警察官も、教師もおるから。ホストの人は、茶々をいれつつ見守っている。ちょっと寂しいけど、微笑ましい。盧笙も楽しそうや。当然盧笙は盧笙のコミュニティがあって、それは仕事場だったり、学生の頃の友人や養成所の頃の友人なんかも。
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