彼らにはみなショタヴィッチの才能ありけりショタビッチの王子様
・金ちゃん
何も知らないように見えて全てを知っている金ちゃん。
気まぐれに「おっちゃん、ええことしたるからたこ焼き買ってくれへん?」と誘うショタビッチの才能がある。
相手がショタコンでなくても関係ない。
金ちゃんがたこ焼きを食べたい時におぢさんがいたら無理やりええことをされてたこ焼き代を毟るのだ。
そしておぢさんは間違いなくショタコンに目覚める。
・キコちゃん
アメリカの治安悪い路地裏でおぢさんを待ち伏せし、色目を使うメス男子。
興味ありそうだったらホテルにシケこみ、賢者タイムのところ財布を盗んで帰る。
今後財布以上にお金くれそうなら盗まずにキープする。お気に入りおぢは、ラインの返信するだけでお金くれるおぢ。
自由の国ならでは()、女だと思ってナンパするチャラ男から貧乏そうなおぢまで様々な経験をしたという……
・入江先輩
話を聞いてくれて優しいおぢを都合のいいように使っている。
おぢとベタベタの関係だったが態度が変わったことに気付き「僕以外の子と会ってなんかしてたり…しないよね……?」と刃物を持ち脅すメンヘラビッチ。
おぢが子持ちだった日には一家惨殺事件が起きるであろう。まだ起きてないから彼はムショの外にいられるってわけや。
・ジョナタン
当然のようにデートしてお金くれるおぢがいるし付き合いも長いためもはや第二の家族と化している年上キラー最終兵器。
エロいことはしない純情派パパ活。試合も見に行ってるので成長に涙することもある優おぢ。
勝手にエドニキに片思いだと思い込んでいるため上手くいくことを願っているがジョナタンはノンケなのだ。
・ミルちゃん
「フォロワー増やす方法教えてあげるよ」の声にホイホイ釣られて来てしまった犬。
しかし、それはミルちゃんの健全なインスタアカウントではなくえちえちSNSの場だった。
みんなにチヤホヤされるのが気持ちよくて過激な投稿にハマってしまう……
予想以上の才能におぢは息を飲み、「君の友達も出てみない?」とさらなる深淵へ誘う。
ミルちゃんはそのことをマックに話したが、無事通報されおぢは豚箱にぶち込まれ臭い飯を食うことになった。
おぢが亡き今もミルちゃんはひっそり投稿しているとかなんとか……
・ゼウス様
おぢは恥の多い人生を送ってきた。
家を持たず友を持たず、醜悪な顔に傲慢な態度。
誰も関わりたくないと思える人間で、ダンボールの上で寝ているところ暴力に晒されたことなど数え切れない。
おぢは、この世の全てがどうでもよくなった。
他人のことも、自分の人生さえも。
親のいないおぢは母なるエーゲ海に還ろうと思い、身を投げて命を絶つことを決意した。
しかし、せっかくなら最期に景気のいいことをしてからあの世に逝こう、と。
1銭も持ってない状態ではその日を生きるだけでもギリギリだ。
それなら他人から盗むしかない。
標的にしたいのは身綺麗にしていていかにもおぼっちゃん・お嬢さんな子供だった。
子供相手なら腕力で物を奪うことが出来るし、手持ちがなくても親から身代金を要求することが出来る。
女だったら身体をまさぐって遊んでやろうと。
前を通ったのは、清潔感のある服を着て容姿端麗、生まれながらに勝ち組のゼウス。
ぼやぼやと幸せなことしか考えてなさそうに歩いており、格好の餌だった。
女じゃなかったのは残念だと思ったが、背後から首を絞めようと手を伸ばす。
その瞬間、ゼウスは振り返り手を受け止め不安な表情を浮かべた。
「お主、体調でも悪いのか?
今にも倒れそうじゃったぞ」
襲おうとした相手に、心配する言葉をかけた。
「…よく見ると顔色が真っ青じゃな。
薬でもやっておるのか?」
「ちげぇよ。薬を買う金すらねぇんだ。
坊ちゃん、くれねぇか?」
「ふむ。金がない…となると、食べ物にも困っていそうじゃな。
ワシは今おつかいの途中なので恵むことは出来ぬが、おやつに持ってきたパンなら半分やれるぞ?」
ゼウスはカバンからカニの形をした菓子パンを取り出すとおぢはそれに釘付けになった。
金を無理やり奪って高い肉でも食えば良かろうものが、目の前にある潰れかけのカニパンがものすごく輝いて見える。
「っ…おい!そのパンよこせ!!」
「慌てるな。今半分にしてやるからの」
カニパンを袋から取り出そうとするが、袋が勢いよく破け地面に落ちる。
すかさずおぢはカニパンにかぶりついた。
半分ではなく、全部もらえるのだ。
口の中に入る泥も、地面に這いつくばる恥もどうでもよかった。
「相当腹が減っていたようじゃな…すまない。
全部やるからゆっくり食べるのじゃ」
頭の上から優しい声を掛けられ、カニパンに涙がしたたり落ちる。
口にパンを詰め込んだままむせび泣いた。
カニパンを食べ終わると、狭い心にも恩を感じてしまい、金を強奪することなど考えられなくなった。
「坊ちゃん……
生きててこんないいことがあるなんて思いもしなかった。
俺に対して優しくしてくれてありがとよ」
「それは良かった。
全ての人を受け入れることは、ワシのつとめじゃからの」
全ての人を受け入れる……
それは決して簡単なことではない。
人である限り、完全な平等など成し得ることは出来ないのだから。
それでも、彼なら出来るかもしれない。
そう思わせるほどの熱意がそこにはあった。
「じ、じゃあ……こんな俺でも、受け入れてくれるのか?
髪は長すぎてダニは住んでるしインキンや水虫だって持ってるんだぜ」
「うむ。ウチに来てくれたら風呂に入らせてやるし病院も紹介する。
それに、お主は必ずやその生活から抜け出せると思っている」
「この俺が……?」
「そうじゃな、良い方向に導かれる道とはなんなのかを占ってやる。
さぁ、手を貸せ」
おぢは言われるがままに手を差し出した。
ゼウスはその手を両手で包みさすさすと温めた。
身長が小さいため子供だと思っていたが、案外手の大きさは大人に近いものだった。
女など触ったことないおぢでも、女の手の方が柔らかいに違いないと思える。
彼は子供ではなく、立派な男なのだと今理解した。
「ほう……お主の今までの人生は長くつらいものであったな。
しかし安心しろ。
エーゲ海に近付けば近付くほど吉報あり、じゃ。
そこまで行く金はあるのか?
良かったら車を────」
「いや、大丈夫だ。
丁度そこに用があったからな……」
エーゲ海……おぢが死のうと思っていた場所だ。
やはり死ねばいいことがあるということなのか。
そう落胆してゼウスと別れた。
死ぬ前にあんな聖人に出会えて優しくされたというだけでまだマシだ。
エーゲ海へ太陽と共に沈むために、昼夜問わず歩いた。
初めて見たエーゲ海は先程見た彼の心を表すかのような広さを覚えた。
あの深い心に沈めるのなら本望だと、浅瀬から迷わず深く歩みを進める。
海が肩ほどまでに足を踏み入れると、石のような物がコツ、コツと数発頭に当たる感覚があった。
思わず振り返ると、先程見たゼウスと同じくらいの身長をした子供が数人、石を構えおぢを見ていた。
「ワーッ!!海藻の怪人だ!」
「逃げろーッ!!」
持っている石を一斉に投げられると思った瞬間、大きな声が聞こえて足の力が抜けた。
「コラ!!人に石を投げるなど許されない行為です!
全員お仕置きですよ、来なさい!!」
その声が最後まで聞こえることはなく、海に頭が沈んでいた。
「……ですか。大丈夫ですか」
おぢが目を覚ますと大きな教会の前に寝そべっていた。
周りには石を投げてきた子供達と、神父の格好をした老人。
「ああ、やっと目を覚ましてくれましたね……
すみませんが、髪の毛が岩に絡まっていたので切らせてもらいましたよ」
海水に濡れた髪の毛が背中に張り付いていないことを感じると、子供は切られたと思わしき髪の毛を掴み回して遊んでいた。
「海藻怪人!お前、海藻のくせに泳げねぇのかよ!」
「ギャハハ!ビショビショの海藻なくなって、ただの怪人だな!」
「やめなさいあなた達!
お仕置きを増やされたいのですか!?」
「やーだよー!!」
好き放題していた子供達は老人の一喝で散り散りに逃げ出した。
「あの子達、自由ですが許してやってください。
私が親代わりですゆえ、全員の面倒を見ることは難しいのです」
この大きな教会の神父がこの老人。
そして児童養護施設の面も担っていて、あの子供達は親がいない。
そのことがすぐに理解できた。
「…お仕置きって何するんだ?」
「宿題ですよ。学校にも行ってないですからね…」
子供達は、昔のおぢと同じ境遇なのだ。
なのに、おぢとは全く違う生活環境に身を置いている。
何かを間違えなければ、自分もここで暮らせていたのかもしれない……
「俺も親はいねぇし学校にも行ってねぇ。
今までずっと外暮らしだ。
だから、海に行って死のうと思ったんだ」
「そうでしたか……
しかし、あなたは死のうと決めたというのに助かった命です。
それはきっと神様のお導きなのですよ」
「…んなわけないだろ。
生きてたって、家も仕事も希望もねぇんだ」
「これはこれは、まさに運命ですよ……
この教会では丁度、働き手が必要なのです。
あなたにはここで子供達の面倒を見る手伝いをしてもらいたい。
部屋も用意しますよ、どうでしょうか?」
───────────
「この世に神様は存在します。
つらい期間が長くても、神様のお導きに沿って生きていれば幸せを手に入れられるのです。
さぁ、皆さんも手を合わせて……」
「なぁ、海藻のおっさん。
さっき来たチビガキに大量の菓子なんかあげて、どういうつもりだよ。
貧乏でもなさそうなのに。俺も食いてぇ!」
「いいえ…あれは恩返しなのです」
「はぁ?ガキに?
まさかエンコーか?エンコーしてんのか?」
「ワーッ!変態おっさんだー!!
逃げろーッ!!」
「…あなた達、宿題はやったのですか?
期限内に終わらせないとおやつのカニパンは抜きですよ」
「ゲッ!しゃあねーなぁ!
頑張ってやるから、今日はカニパン2個な!」
END
ナンダコレ