淹れたばかりの紅茶に口をつけていた種ヶ島が、隣に座る越知の様子におや、と目を見張る。先ほどまで真横に引かれた口元が通知で震えたスマホを確認した途端、緩やかに上を向いたのだ。
傍目から見ればほんの些細な機微であっても、何事にも動じない姿を近くで見ている身としては大きな変化だ。反応を見逃さなかった種ヶ島は、顔をのぞき込むようにして尋ねる。
「なんや嬉しそうやん?」
「……家族から写真が送られてきた」
声をかけられた越知がハッと顔を引き締め、持っていたスマホを差し出す。
いつもの佇まいに戻ったのを少し残念に思いながら、向けられた画面に目を向けると、毛並みの美しい猫が縁側で優雅に寝そべる姿が写っている。過去に合宿所でも見せてもらった越知の実家で飼われている猫だ。
1938