きっと秋の穏やかな朝の話「ん…。」
司が目を開けると、少し薄暗く雑多な部屋が視界に入った。
窓からは朝日が覗いていて、スマホを確認すると6時30分を少し過ぎたところ。辺りを見回すと、近くのテーブルに昨日読んでいた本が半分もいかないページにしおりが挟まれて置いてあった。
(そうか、昨日はそのまま眠ってしまったんだな…。)
類の部屋には演劇関連の専門書はもちろん、機械関連の専門書も沢山ある。昨日司が読んでいたのは、機械関連の本だった。
(俺が読んでもさっぱり理解できなかったうえに、眠ってしまった。こんな本を読んで、ロボット達やらを作って操れてしまう類はやっぱりすごいやつだ!)
と、自分のことではないのに少し誇らしくなる。
そんなことを思っていると、背中が暑くて足が冷たいことに気がつく。背中には類が張り付いていて、足は布団から少しでてしまっていた。
あと数日もすれば12月になるし、最近朝夕も随分と冷え込むようになってきたので、類も寒くて同じ布団に入ってきたのだろうと予想がつく。背中を向けていた体を類と向かい合うようにして、すやすやと静かに眠る顔をみる。なんとなく類が起きたら、少しニヤっとした顔であの本の感想を聞かれるのではと思い、悔しくなって冷たい足を類の足に絡ませた。
「ふふん、これでお相子だ!」
ちょっと得意気に、いつもよりも静かな声で呟く。
今日は休みで、出掛ける予定もあるが休みにしてはまだ起きるには早い時間だ。意外と温かい類の体温に身を任せて、司はもう一度目を瞑る。
次に目を覚ましたら、台所を借りてホットケーキでも作ってやろう。一緒に作って、どちらが上手く焼けるか競いあってもいいな。休みの日の朝ごはんがホットケーキなんてちょっと特別だし、ウインナーをつけてボリュームをだせば食べごたえがであるんじゃないか。野菜は細かく切ってスープにしてしまえば飲んでくれるだろうか。
あれこれ考えているうちに、また睡魔が襲ってくる。
今日もまた素晴らしい1日になると、目の前の温もりを感じながらもう一度眠りにつくのだった。