合コンで知り合った白赤。初デート編。前回までのあらすじ。
合コンで激マブ赤也クンと知り合った白石は意を決してデートに誘うのであった。
「えっと…………」
俺が答えに躊躇っていると、目の前の白石さんは少し眉を下げて「あかんかな?」と自信無さげに訊いてくる。
「ちょ、ちょっと!トイレ行ってきます!」
とにかく少し時間が必要だと思った俺はトイレに駆け込んだ。
トイレの中で財前にメッセージを送る。財前はすぐに返事を送ってきた。
──財前っ!
──どうやった?白石さん家は
──綺麗だったよ!
──ほんまに泊まったんかwwww
──白石さんってホモなの?
──まさか合コンに行って童貞の前に処女捨てる事になるとは……
──そこまでされてねーよ!今告白された!!どうしたらいい!?
──知らん
──ちゃんと考えろよ!
──いやお前の問題やろ。あかんなら断りや。
──あかんってワケじゃないけど。あんなにイケメンなのに俺っておかしくね?
──白石さんは基本おもろくないけど、悪い人やないで。少なくともお前のこと騙そうとか、変な事は考えてへんやろ。昨日の様子見ててもかなり本気やと思う。
「ほんき…………」
白石さんと付き合いの長い財前がそう言うなら、きっとそうなんだろう。騙されてるとかは思わなかったけど……まだ白石さんがどういう人かよく知らねーし……。それに、体目当てだったら昨日の夜色々出来ただろうし……つーか体目当てって何だよ。
流しの鏡に写った自分の体を見て、ため息を吐いた。
女みたいな体でも無いし、顔もフツー。白石さんはいったい俺の何が良かったんだろう?
白石さんは正直男の俺でもドキッとするようなイケメンだし、背も高くて、今朝見た裸もしっかり筋肉がついててすげーカッコ良かった……。
席に戻ると、白石さんはニコッと微笑んだ。ほんと、カッコ良いよなぁ。
「あの、白石さん……」
「うん」
俺は思ったことをそのまま伝える事にした。
「えっと……俺、まだ白石さんの事、ちゃんと知らなくて……」
「うん」
「あの、どーしたらいいか分かんなくって……」
「そっか……」
思った以上に言葉がまとまら無かったけど、白石さんは優しく頷きながら聞いてくれた。マジで超優しい……うちの先輩とは大違いだ!!
「切原クン、今日はこの後ヒマ?」
「え……あ、はい……」
「俺がデートって誘ったから切原クンを迷わせてしもたんやな、ごめん」
「いやそんな……」
「デートって考えないで、お互いの事知るためにも、普通の友達として遊ぶっていうのはどう?」
白石さんの提案に、俺は大きく頷いた。
「それが良いっす!白石さんと一緒に遊ぶのはすげー楽しみだけど、デートってワケじゃないし……って思ってたんスよねぇ!」
「あははっ」
白石さんは笑ってくれたけど、少し気まずい感じに目を伏せた。
あっ……そうだよな……白石さんはデートしたかったんだもんな……。
「あ、えと……スンマセン……」
「え?」
「デートじゃ、なくなって……」
「あ、ええよええよ。切原クンに気遣わせてる方が嫌やし」
「うう……」
「せっかくやから、楽しもう、な?」
白石さんが爽やかに笑う。
本当にCMにでも出てきそうなイケメンだ……俺は不覚にもドキッとしちまった。
+++
白石さんが俺の行きたい所を訊いてきて、俺は普段ゲーセンとかに行くって事と最近はVRのゲームが好きって話をした。そしたら白石さんがVRもあるデカいゲーセンみたいなテーマパークを見付けてくれて、そこに行く事になった。
屋内なのにジェットコースターとか大型のアトラクションもあって、俺は館内に入るなりすぐにめちゃくちゃテンション上がった!
「すげー!白石さんっ早くっ」
「待ちや!ちゃんと計画立ててこ。切原クンは何乗りたい?」
「え?全部?」
「さすがにそれは無理やって!ちゃんと乗りたいの決めて行かんと後悔すんで」
白石さんがパンフレットを広げる。
「あっ!あれ乗りたい!」
「待ちーや」
「えー?並びながら考えたらいーじゃん!」
そう言って白石さんの腕を掴んで引っ張ると、白石さんは大人しくなった。
並びながらパンフレットを覗き込んで、俺達はどこに行きたいか話し合った。
結局、待ち時間もあるから上手く纏まらず、VRだけは行く事にして、あとは目に付いたアトラクションに行こうという話になった。
VRは6人同時にプレイできるSFのシューティングで、俺がチーム内でのトップスコアを出すと白石さんは驚いていた。
「切原クンめっちゃ凄いやん……えっ、ちょ、見て、オンラインスコアでも164位やって!」
白石さんは店員に教えてもらった、過去のプレイヤーを含めたスコアの一覧が表示されてるページを見て興奮していた。
「えー?それって凄いの?」
「凄いて!店員さんもめっちゃ驚いてたでっ」
「白石さんは?」
「え……俺は、1258位…………」
「えっ!?ザッコ!!」
俺が笑うと白石さんに頭を小突かれた。
その後、ゾンビのシューティングに行って、白石さんは「さっきのと同じようなやつやん……」とか言ってたけど無視した。
2人で並んでシートに座って、デカい画面に向かって銃を向けた。
白石さんは何でも出来そうなのにゲームはあんまり上手くなくて、殆ど俺が倒して、最後のステージまで行くと白石さんはずっと「切原クンすごい!」「あかん!もうあかん!」って騒いでた。ゲームも面白かったけど、白石さんの反応の方が面白かった。
そうして幾つかアトラクションを回って、お腹が空いた俺達はフードコートに来た。
「切原クンは席取っといて。何食べる?」
「んーっ任せますっ」
「ほな適当に買ってくるな」
そう言って白石さんは俺を置いてレジに向かって行った。
席に座りながらレジに並んでる白石さんを眺める。白石さんも俺の方を見ていて、目が合ったから手を振ってみた。白石さんはニコニコして嬉しそうに俺に手を振る。
あんなに大げさに手振らないでも……。
俺もそんな白石さんを見て自然と笑顔になった。
白石さんは不思議だ。先輩だけど、うちの先輩と違って怖くないし優しいし、友達みたいに一緒に居て楽しい。でも先輩らしく俺を導いてくれる。
白石さんは先輩?友達?俺達の関係は何なんだろう?
白石さんを眺めて居ると、白石さんは後ろに並んでいた女の人に声を掛けられた。さすがに会話までは聞こえないけど……あの女の人の様子からして……ナンパっぽい……。
そりゃあんなにカッコイイもんな……昨日もモテモテだったし……。
…………つまんない。白石さん早く帰ってこないかな。
「席取っといてくれておおきに」
少しして、ドリンクを持った白石さんが戻ってきて「料理出来たらこれ鳴るんやって」と小さな機械をテーブルの上に置いた。
「切原クン、メロンソーダで良かった?」
「うん、好き」
「ん、良かった」
白石さんがニコッと笑うから、俺も笑い掛けてみた。すると白石さんは顔を赤くして目を逸らす。俺は何となく気分が良くなった。
「カレーとオムライスにしたよ。どっちがええ?あ、あとポテトと唐揚げも頼んだ」
「カレーって辛いやつ?」
「え?どうやろ……こういう所のやつはそんなに辛く無いんやない?辛いのあかんかった?」
「うん」
「え、ごめん……」
「ううん、大丈夫」
「カレーは俺が食べるから、切原クンはオムライス食べてや」
そんな話をしてると呼び出し音が鳴って、白石さんが取りに行ってくれた。
「あ、そういえばいくらでした?」
「あっ……ええよ、今日は俺が付き合わせたし、奢り」
「へへっ!やったー!ごちそーさまっす!」
「あはは」
白石さんが食べてるのを見てたら、俺もカレーを食べたくなってきた。
「ひとくち食べたい」
「ええよ、どーぞ」
そう言って白石さんはお皿をこちらに寄せてきた。
「あーんってしてくんないの?」
「え?」
俺が口を開けると、白石さんは顔を真っ赤にしてスプーンを差し出してきた。俺は少し身を乗り出してそれを食べた。
「んーっ……やっぱちょっと辛いっすね」
「さ、さよか…………」
それだけ呟くと、白石さん俯いて大きな溜息を吐いた。
「どうしたんすか?」
「……………………」
白石さんが黙り込むのを無視して、俺はオムライスを食べるのを再開する。一口食べると、白石さんはまたはあっと溜息を吐いて俺に目を向けた。
「……なんもあらへん…………」
その白石さんの顔を見て俺はドキッとする。目が鋭くて真剣に俺を見詰めるから……。ずっと優しい表情をしていた白石さんが急に雄って感じに見えてきて、俺は変に緊張してきた。
少し無言で飯を食ってると、白石さんが気を遣ってか明るく話し掛けてきた。
「次、どこ行こかぁ」
「んー、じゃあ白石さんの行きたいとこで」
「ほんなら……あ、ここは?シアター型アトラクションやって。ずっと動いてたし、ちょっと休もうや」
テーブルにパンフレットを開いて、白石さんは優しく笑う。さっきの鋭い感じではなく、優しい白石さんに戻っていて安心する。
でもなんか、さっきの白石さんを思い出してドキドキもしていた。
俺はパンフレットなんか見れずにぼんやりと白石さんを見詰めていた。
「え、これって……」
ご飯の後、白石さんが提案してくれたシアター型アトラクションに並んだ。
俺は適当に返事をした事に後悔していた。ここってホラーじゃん!
一回に入れる人数が多い分、並んでからすぐに奥の方へ案内された。白石さんの話にうんうんと返事をしながら、周りを見回す。室内がどんどん暗くなって内装がおどろおどろしい感じになって、思わず首を竦める。
「3Dなんや〜……どや、似合う?」
シアター前の待合室に向かう道中に3D用の眼鏡を渡されて、白石さんはそれを掛けて俺に顔を向けた。うん、そんな変な眼鏡掛けてても、白石さんってカッケーの……。
「え、あれ……もしかして…………ホラー苦手やった……?」
白石さんが3D眼鏡を外して、焦ったような顔をしていた。
いや、別に苦手じゃねえし!怖いだけで……。
俺はダサいと思われたくなくて首を振った。
「は、はあ?べつに、苦手じゃねーし!」
その瞬間、室内の照明がぐっと暗くなって、女の悲鳴が響く。
「うわあっ!」
ただの演出なのに、俺はそれにビビって白石さんに抱き着いてしまった。
近くに居たカップルが微笑ましいものを見るように、クスクスと笑って俺を見詰めてくる。俺は恥ずかしくなってすぐに白石さんから離れた。
室内に演出のアナウンスが流れる中、白石さんは俺の耳元でコソコソと話した。
「……ごめん、知らんくて……」
「…………べつに」
「……やめとく?出ようか?」
「……大丈夫っすよ!」
「…………ほんならさ、暗いし……ええやろ?」
そう言って白石さんは俺の手を握ってきた。
「え?」
白石さんの顔を見ると、頬を赤くして真剣な顔をして俺を見詰めていた。
……そんな顔されたら断れないじゃん……つーか白石さんの手、あっつ……まあ、確かに暗いし、こんな手元まで見えないし…………いいか……。
白石さんの真剣な顔を見るとドキドキする。俺の手もすごく熱くなってきた。
「……ご、ごめんな?」
「……べ、べつに、怖くなかったっつーの!!」
「あ、あはは……せやな……」
上映中、俺は誰よりも大声をあげて白石さんの手をぎゅうっと握りしめてしまった。クソ……隣のカップル、ずっと俺見て笑ってやがった……。
つーか結構怖かったじゃねーか……なんで周りの奴らは平然としてんだ……?
「ゾンビ倒すやつは平気やったのに……」
「あれは全然違うじゃん!!」
「えー?俺はゾンビの方がビビったけどなあ……画面に飛び掛かってきて怖かったやん」
「それは白石さんが下手だからっしょ」
「それを言うなら切原クンが上手すぎや」
白石さんがニコニコ話してくれるのに、俺は実はまだ脚がぷるぷるして……不機嫌みたいな態度になってしまう。
「あ、切原クン、クレープ売っとるよ。食べよか?奢ったるよ」
「……うん」
白石さんは優しくて俺にすごく気を遣ってくれている。そんな白石さんに何だか申し訳なくて、ちょっと落ち込む。
うちの先輩なら、こういう時俺をからかいまくって、ビビってる俺の動画撮ってインスタにアップしてるよな……うわ、考えたらムカついてきた……。
そう思うと、白石さんって本当に優しい……俺も白石さんに何かしたいなって思う……。
「切原クン、何にする?」
俺がぐちゃぐちゃ考えて白石さんに着いていくと、クレープ屋のレジの前だった。白石さんは優しく笑い掛けて居る。
「えっ……とぉ、アイスチョコクリーム!」
白石さんが俺の代わりに注文も会計もしてくれて、2人でクレープを焼いているところを眺めた。
「はい」
「あざっす!」
席は埋まっていたから人通りの少ない壁際に寄って、白石さんがクレープを渡してくれた。
「あれ?白石さんのは?」
「あー……俺、あんま甘いもん得意やないからさ」
「そーっすか……」
白石さんは俺のために動いてくれる。でも俺は何もしてない……。
俺も何か白石さんのために出来る事をしたい!
「あの、俺、何か出来る事ないっすか!?」
「……へ?」
「俺、白石さんに気遣ってもらってばっかで……俺も白石さんに何かしたいッス!」
「えー!?なんもしとらんよ!」
「してるっすよ!クレープ買ってくれたし、さっきも……手、とか……俺の事笑わないし……」
「もう、なんもしてへんって……」
「いや!何かさせてくださいっ!!」
「あー……んんー…………」
白石さんは腕を組んで俯いて唸っている。
「何でもするっす!!」
うーん……と唸りながら白石さんは俺を見詰めてきた。
「何でも……?」
「はいっ!あっ、いや、俺に出来ることなら……」
「ほんならさ…………」
白石さんは顔を赤くして俺をじっと見詰めて言いにくそうに口をパクパクさせる。何が言いたいか分からなくて俺は首を傾げる。
「なに?」
「あ、いや………………あのな、その…………」
「うんうん」
「えと、クレープをさ…………」
「買ってきますか!?」
「あ、いや、ちゃう……」
「あっ!ひと口食べます?」
「あ、うん……うん……その、」
「はい」
「……あーんって……して欲しいねんけど………………」
「へあ?」
「…………あかん?」
白石さんは顔を真っ赤にして眉がハの字になって……すごく必死な顔をしている。
そういえば、白石さんはめちゃくちゃイケメンなのに、何故か俺の事が好き……なんだった……。
そんな白石さんな必死な顔を見てると、俺もドキドキして……顔が熱くなる。
「えー……あはは、そんなんで良いんすか?あはは……」
「……うん」
白石さん……顔が良いから、すごくドキドキしてきた……。
「あはは……はい、あーん…………」
「あー…………」
クレープを差し出すと、白石さんが俺を見詰めながらそれに齧り付いた。イケメンってすげー……顔が近いだけでドキドキする……。
「……甘いの苦手じゃないんすか?」
「……大丈夫……めっちゃうまい…………」
白石さんは赤い顔のまま唇をペロッと舐める。う……なんか、エロい……。
「…………切原クンは俺が気ぃ遣ってるって言うけどさ……」
「んえ?」
「………………ほんまは、下心あるからやで」
白石さんは顔を赤くしたまま俺を見る。俺も白石さんに視線を向けながらアイスとホイップクリームを舐める。
「……白石さんは俺のどこが好きなんすか?」
「えっ…………かっ、顔…………」
「はあ?顔ぉ?」
「えっ、いや、ちゃう!いや、顔も好きなんやけど!」
「…………白石さんって鏡見た事あるんすか?」
「へ?」
「……白石さんみたいなイケメンに”顔が好き”って言われても…………」
「え……いや、切原クンって……めっちゃかっこええやん……言われたりせえへんの?初めて会ったとき、アイドル来たかと思ったで」
「えー…………」
白石さんは何故か必死に話し始める。この人嘘つく事あんのかな?そんなに一生懸命に語られると、嘘みたいな話でも本当だと思える。
そんな白石さんがおかしくて、俺はつい笑ってしまう。
「……笑うとめっちゃかわええし…………」
「えへへ……白石さんさぁ、さっき下心って言ってたけど、どこまで考えてんの?」
「えっ…………」
「キスしたいとか?」
そう訊くと白石さんはカァーッと顔を赤くした。
「…………えと、はい………………」
「エロい事も?」
「え……………………ひ、引かんで欲しいんやけど……」
「考えてるんすね」
「いやっ……ちゃう!そんなっ、考えてへんっ…………す、少ししか……」
「あはは」
「…………はあ、俺、今めっちゃカッコ悪いな…………」
白石さんは赤い顔を隠すように、手で覆った。
「んーん、白石さんはかっこいいっすよ」
「え?ほんま?」
俺がそう言うと白石さんの顔が少し明るくなる。わかりやすっ……。
「そんで、今は面白い」
「えっ!?ほんまに!?」
今度は顔をキラキラさせる。
「っしゃ!おもろい言われたの初めてや!」
「えー?面白いって言われるのが嬉しいんすか?」
「当たり前や!最高の褒め言葉やで!」
「えー?あははっ」
俺達は目を合わせて笑い合った。
白石さんの俺を見る目が優しくなって、俺の髪をくしゃりと撫でた。
「ほら、早よ食べんとアイス溶けんで?」
「ん……」
優しくされると胸の奥があったかくなってなんかフワフワして、俺も目を細めてニコニコしていた。
クレープを食べた後、ぶらぶらと館内を歩きお土産なんかを見ていたら20時になっていた。着いたのが昼過ぎだったのもあって、時間が経つのがあっという間だった。
「最後に何か乗って帰ろか?」
白石さんは完璧なイケメンの優しい笑顔を俺に向ける。
何だろう……何か物足りない気がする……。このまま帰ってしまうのは、何か違う気がした。
「んー……それよりさぁ…………そのまま帰るの?」
「え?あ、ご飯食べよか……」
「そうじゃなくてさぁ…………」
俺の気持ちは全く白石さんに伝わっていない。ちょっとムカついて、俺は唇を突き出して不満そうな顔をして足を止めてみた。白石さんはわかり易く焦り始める。
「えっ……な、なんやろ…………あ、飲みに行く?」
「むー…………」
「え、えー?なんで不機嫌?」
俺達が足を止めた通路はあんまり人が通らなくて、みんな出口に向かって歩いているから俺達の方なんか見向きもしなかった。
俺がぷいっと顔を横に向けると、白石さんは困った顔をして俺を覗き込む。こんなめんどくせー事してんのに、白石さんはやっぱり優しい。
「…………ごめん、切原クン、どこ行きたいか教えて欲しいんやけど……」
「…………俺の事じゃなくて、白石さんはどうなんすか」
「えっ、あっ、俺?」
白石さんは心底意外って顔をする。
そう、白石さんは俺の事ばっかりで自分が何したいか全然言ってくれない。優しすぎるんだよ。
「え……と…………切原クンと、もう少し一緒におりたい……」
「………………それだけ?」
「えっ?えー…………」
白石さんは眉をハの字にして黙ってしまった。
こういうのなんて言ったっけ…………あ、そうだ。
「ヘタレ」
「えー!?」
驚いた白石さんの横に跳ねた髪がぴょんっと跳ねた……ように見えてちょっと面白かった。
「……アンタ、ここでバイバイしてまた会えると思ってんの?」
「えっ…………」
「このまま普通に別れてまた連絡すれば良いとか思ってんだろ」
「…………」
「どーすんの?俺、もうアンタのことブロックしちゃうかも」
「え…………」
「…………俺に言いたい事あんなら今言っとけって言ってんだよ!」
つい声がデカくなっちまったけど、人が多いからあんまり目立たなかったみたいだ。
でも目の前の白石さんは肩を強張らせて真剣に俺を見詰めて、結構衝撃を受けているっぽい。
白石さんが目を鋭くして俺を射抜いた。ドキッとする。そのまま白石さんは息を吸って口を開く。
「……俺、やっぱり、切原クンのこと……めっちゃ好きや。やから、これからも、ずっとキミとおりたい。あ、あかんかな……?」
途中まですごくカッコ良かったのに、最後で弱気になる白石さんはやっぱりヘタレだ。俺はそれが可笑しくて吹き出しちまった。
「くっ……あははっ!」
「え…………?」
白石さんは俺が笑ってんのが意味不明って顔してオロオロしてる。
「……ダメじゃないっす!」
「え?それって……?」
「へへ……俺も、白石さんのこと、めっちゃ好きになったみたい……」
「えーっ!?」
白石さんはそのままヘナヘナと床に座り込んでしまった。
「え?なに?大丈夫?」
「……し、心臓止まるかと思った………」
そう言って白石さんは自分の胸元をさすった。
「なんで?」
「……そんなん、嬉しくてに決まっとるやろ!」
キッと白石さんが俺を見上げる。その顔がまだ赤くて、俺は気分が良くなって自然と笑ってしまう。
「えへへ〜」
「なっ……もう、かわええの止めて!」
「はぁ?」
「笑うのやめてっ!かわええんやから……」
ブツブツ言いながら、白石さんがゆっくり立ち上がる。
「あれ?どこ行くんやっけ?」
「えー?分かんないのぉ?」
白石さんはカッコイイ顔してキョトンとしている。
「俺も、白石さんと同じ所に行きたいって思ってるっすよっ」
「え?」
「…………ヘタレ!」
背伸びをして、また眉をハの字にさせてる白石さんの耳元に囁く。
「……白石さん家、行きたい…………」
早くえっちさせたくてソッコー付き合わせてしまった……次回、初えっち編。