メイドカフェD&D(メイドではない) D&Dはしがないバイク屋である。ぶっちゃけて言うならば、売り上げが足りていない。全然足りていない。大赤字である。
というわけで、バイク屋を経営しながらメイドカフェをすることになった。
とうぜんながら「なんでメイドカフェなんだよ」と聞いたイヌピーに、「顧客の強いご希望にお答えすることになった」とドラケンは眉間に皺を寄せながら答えた。
D&Dはあくまでバイク屋である。メイドカフェはご指名が入ったときだけ、特別に行われるサービスである。
「イヌピー、ご指名だ」
「またか」
「まただ。お疲れなんだろ」
イヌピーはドラケンが持っているタブレットを覗き込む。指名は三十分後。ドリンクはカルピスをご希望だ。これは変な意味ではなく、カルピスは乾家の夏の定番だったことに由来する。どうやらこれは相当にお疲れのようだ。もっともイヌピーのお客様は「相当にお疲れ」でない時の方が少なかった。かなりのブラック企業にお勤めらしい。
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