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    異動のはなし春の人事異動が決まり志摩は警務課に異動、伊吹は機捜に残る事になった。いつかは必ず来るとは思っていたが唐突で二人は困惑した。何度も言うがこうなる事は分かっていた。
    「なんで志摩だけ異動なの?」
    「まぁ、上が決めた事なら仕方ない。春までよろしく、相棒。」
    志摩はあっさりしたものでそう言ったきり、いつも通り冷静に仕事をした。その反面伊吹はくさくさして落ち着きなく態度も粗暴になる。
    分かりやすいやつだなと陣馬は笑ったが、九重はこの二人を引き剥がす事は得策では無いなと内心ひやひやしながら人事異動の通知欄を眺めていた。

    次のシフト、またその次のシフトとあっという間に春まで過ぎていった。
    相変わらず志摩は冷静だし、伊吹は面白くなく不貞腐れていた。バディ解消、その日も志摩は変わりなく「じゃあまた」なんて言いながら退勤した。
    異動になれば顔を合わせることも少ないし飲みに行くと言ってもこんなご時世だ、家に呼ぶ?違う部署で話すことが無くなったら?そんな事を考えると終いには悲しくなって伊吹はトイレで少し泣いた。

    志摩がいなくても仕事は上手く出来た。周りも伊吹自身も驚くほどに。これは志摩から教えて貰った事だしルールは守るためにある。必要だからある。伊吹は自分に言い聞かせて手順をしっかり守った。
    「お前、そろそろ新人持ってみるか?」
    「ええ?俺がぁ?」
    陣馬は伊吹に提案した、もうここまでしっかり出来るなら新人を任せてみても大丈夫かもしれない。伊吹も他人に教える立場になればもっと志摩が見てきたものが解るかもと目を輝かせた。
    その話はサクッと進み今度は陣馬とのバディを解消して新人と相棒になる。若くて飲み込みも早くて何よりいい奴、苦労する事と言えば自分の語彙力がなくて相手に伝わり難い事。志摩は俺に随分わかりやすく色々な事を教えていたんだなと、伊吹は缶コーヒーを片手に空を見上げた。
    ゆっくりする間もなく入電が入り機捜車に戻る。警務課になんか行くからうっかりばったり現場で志摩に会う!なんて事もない。慌ててハンバーガーを買って戻ってきた新人に「入電!行くよ!」と声をかけながらこんなにいい奴なのに俺の相棒はやっぱり志摩がいいな、なんて考えてる自分に伊吹はため息が出た。

    今日も今日とて24時間以上の勤務、世の中はコロナ禍自粛なんて言われてるのに機捜が駆けつける出来事は山程ある。事件事故も自粛してくれないもんですかね、とへとへとになっている現相棒が呟いた。「機捜ってハードっすよね、警務課いって人事の相談してこようかな。」へらへらと笑いながらクシャクシャになった頭をかきながら冗談すけどと付け足すのを見て伊吹は目が点になった。

    「警務課って人事扱ってんの?」
    「え?知らなかったんですか?警務課は人事、給与、警察運営の総合的企画、被害者支援などの担当ですよ。」
    「え、わぁ、そっか。まじかぁ。」
    それ知らないの多分伊吹さんくらい〜と言われる横でさっさと荷物をまとめて上着を着込み「お疲れ!」と走り出す。目指すは警務課。
    久しぶりに足取りが軽くて思うように走れている気がする、すれ違う人間に走るな!と怒鳴られるがそんなの気にしてられなかった。

    「志摩!!!」
    「うるせぇな!!!!」
    扉開けて2秒で名前を呼ぶと丁度資料を持って部屋を歩いていた志摩が返事をした。伊吹の倍くらいの大声で。
    久しぶりの志摩をみて伊吹は感動した、生きてる。当たり前だけど数年も会っていないし連絡もろくにしなかった人間だ。姿を見つけるなりひょこひょこついて回って志摩志摩志摩ぁ〜と意味なく名前を呼ぶ。うざそうにしているのも無視して。
    機捜とは違って制服での業務だからなんとなく新鮮で警務課も良いかもな。警務課に異動さして、なんて伊吹は志摩に冗談半分本気半分で言うと志摩は「ダメ」とピシャリと拒否した。
    なんで?と怖い顔をして見せる。志摩にこれが通用しないのはわかっていた。
    「この前お前がついた現場の被害者、山村さん。今は元気にやってるよ。その2ヶ月前の東野さんも、あとひったくりの被害にあった…」
    「え、いや待ってなんで志摩が知ってんの。」
    「…被害者支援、担当なんで。」
    志摩はぷらりと名札を見せる。伊吹が臨場した現場の被害者の支援も志摩が請け負っているそうで伊吹は目を丸くした。
    志摩は警務課に異動が決まってから数ヶ月、平気な顔をしていたが伊吹よりも動揺していた。コイツとならどこまでも行けるような気がしていたから、絶対に来るはずの異動を忘れていたわけじゃなかったのに上手く頭の整理がつかなかった。
    決まった事は覆らない。警務課、仕事内容はざっくりだが知っている。きっとそれなりに出来てしまうだろう。仕事自体は苦じゃ無いのも予想はついていた。
    いざ警務課へ配属されて数週間ぽつりぽつりと志摩は伊吹の名前を聞くようになった。どれも現場で被害にあった人たちの声で伊吹助けられた人たちだ。あぁ、お前ちゃんと警察やってんだな。と志摩は嬉しくなった。
    何度かLIMEをしようかと打ちかけては消してを繰り返す、用事でも無い限りなんだか照れくさい。そうして一年伊吹の活躍ぶりを耳にして自分ができる事を考えた時ふと目に飛び込んだのが臨床心理士の資格だった。警務課には臨床心理士資格を持った警察官が割といる。犯罪被害にあった人の精神的なサポートをカウンセリングなどを通してする事が出来るから。
    「りんしょーしんり」
    「そう、お前が助けた人のあとの人生。サポートしてマス。」
    「志摩ぁ」
    「なつくななつくな!だから、お前は機捜。俺はここでやる。」
    別に2人一緒にいなくても出来る事ってのは結構ある。志摩は伊吹の肩をぽんぽんと叩いて「解ったか、相棒。」と言って笑って見せた。
    カラカラの土に水やったみたいだと伊吹は思う、志摩に相棒と呼ばれただけでまたどこまでも走っていける気がした。



    おわり

    「コロナ禍落ち着いたら、また飲み行くか。」
    「志摩のオシャマン宅飲みしよーぜ、ポテチとか持ってくし。ね。」
    「ポテチばら撒いたらころしてやるからな。」

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