わるいゆめのはなし 配属日が決まり奥多摩でまったりと過ごす日々が終わると思った時諦めなくて良かったと心から思ってそしてほっとした。俺は死ぬまでここに居て本当にしたかったこともさせてもらえずに埋もれていく。どんなに明るく「交番の仕事だって悪くない」と思っていても一瞬たりともその恐怖は拭えなかった。
自分のしでかした事の報いをこれほど思い知る事はないかもしれない。そう確かに感じていた。
「こうなったのは、お前がしでかした結果や。」
「は?」
不気味な腕がそっとドアの方へ向かうのを目で追う。
血が付いている事も気にせずドアノブを開けたと同時に倒れてくる血塗れの志摩の後頭部が鈍い音をたてて床にぶつかる。
怒りが湧いてどうにかなりそうだった。志摩の隣に落ちていた銃が俺を手招いている気さへして、腕を伸ばせば微かに息のある志摩が俺の腕を掴む。
「こ………こ、こ…殺すなっ」
全身の血が引いていく気がした。志摩の言葉で頭から冷や水をかけられたような気になる。犯人に銃口を向けて何枚も何枚も始末書を書かされた最中も奥多摩に移動させられてからもずっと感じていた恐怖が全身を駆け巡る。
「クズはクズのまんま」
これほどの報いを受けることはないとそう思っていたはずだった。
目の前で志摩の呼吸が止まるのを見て久住の言葉が反復する。俺は結局誰かがそばにいなければ変われない。
志摩が死んだ。俺もここで死んだようなものだとそう感じた。振り返り久住を撃つ。もう何もかもどうでもよかった。