かつてはただの荒魂だった吾も気づけば同胞(ノロ)を糧に生き延び、人の姿になる術をも手に入れていた。
人を襲う所で飯にもならぬし、刀使により討伐されてしまうのがオチである。
「…このノロをいただいたらこの町から去らねばな」
刀使によって討伐され荒魂からノロに変わり果てたのを
吸収し、過ごしていたのだがどうやら町中に噂が広まりつつあるようだった。
「んむ。これで―――」
ガサッ。
「!」
人の気配。もし見られていたとすると、マズイな…。
「そこに誰かおるのか」
「あ…バレました?」
草陰から現れたのは一人の少女。
腰には御刀が帯刀されているということは、
「お主、刀使か」
尚更マズイ事になった。
相手が悪い。一刻も早くこの場から退かねばならない。
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