🦎さんのカウンセリング開始「開いている」
中から聞こえた声に微かな落胆を抱えつつ、入室する。扉を閉め奥に進めば、ソファに座り本を読んでいた【魔トカゲ】が鎮座していた。
「招待ありがとう。随分と遠回しなマネをするんだな」
「荘園の主の目は広いからな。騒ぎを大きくしないためだ」
パタンと本綴じてサイドテーブルに置く。尻尾で椅子を指してきたので、警戒しながらも腰を下ろした。
「ノートンは?」
「ベルと一緒だ。安心しろ、危害は加えていない。丁重に扱っている」
「…彼女を返してもらえないか?」
「【教授】、君も私なら分かるだろ?愛しのベッラの願いをできうる限り叶えてやりたい。愛する者に悲しむ顔をさせるのは信条に反すると」
言外に返す気はないと意見され、言葉が詰まる。しかし、それではなぜこの狩人は自分をここへ連れて来たのか。人知を超えた姿を持つもう一人のルキノは、自分とはいえ完璧に考えが読めるわけではない。
「どうやらサバイバーの私は、自分の感情をまともに理解してないようだからな。これ以上、あの子達の前で醜態を晒すのはごめんだ」
「…随分な言い様だな。その言い分だと、君は理解していると?」
「未知に遭遇したら知らずにはいられない。完璧な答えを得るまで追求する。それが『我々』だろルキノ・ドゥルギ。安易な考察で結論を急ぎ、あげく思考を停止するなどサル以下だ」
肌がピリつく。ハンターの威圧的なオーラの前でサバイバーは無力だ。【教授】の皮膚に残る鱗が疼き、痛みが走る。同胞の存在を感じて症状が進行したのかもしれない。
「さて、カウンセリングを始めよう。【教授】よ、なぜノートンに固執する?」
「…仲間を助けるのは当然だ」
「本当に?」