「私とビリーくん、いつまで一緒にいられるんだろう」
ついうっかり、零してしまった一言。
いつの間にか心の隅に巣食ってしまった不安、寂しさ、恐怖、またはそれ以上の何か。
貴方を大切に思えば思うほど、じわじわと心に巣を広げ、侵食していく。
サーヴァントと言う存在な以上、そう遠くない未来に、永遠の別れを告げる事になるのは、避けようのない事実。
私は弱気になると、自分の中に我が物顔で鎮座するこの怪物に、呑まれそうになる。
「んー、一緒に居たいと思う以上、一緒に居られるように努力するのが、いつもの君だろう?」
一度もこんな話をしたことは無いのに、「そんなことを考えているのは、とっくにお見通し」とばかりに、眉根ひとつ動かさず、いつもの調子でビリーは答える。
「それに、今考えてもどうしようも無いことだよ。僕と君は今同じ時を生きてる、違うかい?」
「…そうだけど…未来への確信が持てない、それが怖い」
今まで押し込めていた気持ちを一度口に出してしまうと、堰を切ったかのようにどんどん言いたくない言葉が出てくる。
全てが終わるまでに、私が死んでしまったら?
ビリーくんが消えてしまったら?
もし世界が救われても、座に還る、その時が来てしまったら…?
私の中の怪物が大きくなっていく。
止められない。
それまで黙って聞いていたビリーが、徐に私の左手をばっと掴んで、そのままの勢いで自らの口元に持っていき……
ガリッ
「いっ…!」
——噛まれた。
見れば薬指から薄ら血が滲んでいる…
「な…ちょっ…血が出てるんだけど!?」
何をされたのかよくわからない混乱と痛みから、思わず声が出る。
いや、これは当然の抗議だと思う。
「…そんなことを言う君が悪い」
私に怪我を負わせた本人は、ぷいとそっぽを向いている。
その態度はおかしい、確かに変なことを言ってしまったかもしれないけれど、何も血が出るほど噛む事は無いと思う!
釈然としない思いで見つめる横顔は、何故か心做しか赤い気がする…。
その理由には、結局今に至るまで未だに辿り着けていない。
そう言えば、ビリーは照れると口元を隠すか、そっぽを向く癖がある。
…なんで照れてたんだろう…。
「未来の予約ってことだよ」