誰かのうめき声で目が覚めた。
身体がだるい。力が入らない。酷く熱くて痛む。
月明かりの下、部屋には負傷した兵士がベッドの隙間にまで転がるように敷き詰められていた。至る所からうめき声が鳴る。
だが、自分を起こした地鳴りのような声は、自分自身のものだったかもしれないと思うほどに、鯉登も気を抜くと声をあげそうになった。
列車はどうなった。鶴見中尉殿は、金塊は?月島軍曹はどうした。この兵士たちは怪我人だろうが、死者は出たのか。
「こ、鯉登少尉殿!まだ起き上がってはなりません!」
開け放たれたドアの向こう、廊下から湯の張ってあるだろう桶をもった一等卒が、大きな声をあげないよう、努めて囁くような声で咎め、駆け寄ってくる。
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