背中がひりつく。真新しい引っ掻き傷が外気に触れて脈打つ。下半身にベッタリとまとわりつく湿った感触の不愉快さが、自己嫌悪を呼び起こしてくる。自棄酒を浴びた翌日特有の足の覚束なさと、脳みその不確かさが意識を覚醒させる。最悪な朝だ。
吐き出した息から立ち上る酒精の気配が、昨夜の記憶を引っ張り出して、目の前に突き付けてくる。
頭を抱えながら起き上がると、傍らで上機嫌にいびきをかく男がいた。口の端が切れているが、そんなことは気にも留めずにいる。
「……クズ野郎」
悪態を吐いて、脇腹を蹴飛ばす。返事はない。
*
「やっと来やがったな負け犬野郎!さっさとこっち座れ、今日こそ身ぐるみ剥いでやらぁ!」
そう息巻いて声をあげるのはフラウロスだ。やたらと元気な彼に呆れ、ガミジンは彼が言う通りフラウロスの前に腰を下ろした。
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