×原終一になった日【1日目】あの悪趣味なゲームは終わった。ダンガンロンパは僕たちの手で終わらせたんだ。
世界が崩れ落ちて、無くなって、もう一度瞼を開くまで僕はそう思っていた。
しかし、現実には僕達の体験したのはプログラム世界での出来事だったらしい。僕達の選んだ結末は外の世界の人達にとっては不評で、ダンガンロンパ史上最悪のストーリーだとクレームの嵐が止まず、その後始末に追われる事務員らしき人からはもう帰ってくれと厄介払いされるように自分の荷物と少しの出演料を粗雑に渡され先程まで寝そべっていたカプセルの場所から追い出された。
これでも一応出演者だと言うのにあまりに扱いが雑すぎると思ったけれど建物から出る時にすれ違った16人の男女の姿を目にして確信する。
この後、54作目のダンガンロンパが撮影されるんだ、と。
売れなかった53作目なんて無かった事にして、次を作ればいい、それがチームダンガンロンパの意向だった。
見覚えの無い家に帰り、記憶に無い家族の元へ帰る。接し方なんて分かるわけが無かったから、ただいま。と当たり障りの無い会話だけを交わして自室へ籠る。
結局の所、僕のした事は無意味だったのだろうか。
「…それは違うぞ!!」
突然、脳内に自分の意思とは反した声が響いた。
「あはは、なーんてね。まずはダンガンロンパからの生還おめでとう、もう一人の僕。」
それは余りに聞き覚えのあり過ぎる声だった。間違いなく自分自身の声で、脳裏にはあの時の忌々しいオーディションの映像が浮かんでくる。
「うん、その推理で間違ってないよ。そう、僕は君の前の人格って言えばいいのかな?2…すぐに僕の正体に気がついちゃうなんて超高校級の探偵は流石だね。」
やはりそうかと予想は確定したものの、僕の才能を持ち上げるような言い回しはどうにも気持ちが悪かった。
そして脳内の声は勝手に語り始める。
「思い出しライトの効果で記憶は上書きされる筈で、元の人格は残らない、始めはそう聞かされてたんだけど何故か僕はここに居る。これって凄いことだと思わない!?殺し合いにも参加出来て、才能までこうして手に入れて…へへっ」
ろくでもない。この声が、本当に僕自身の声だとでも言うのだろうか。最低で最悪なこいつの言葉に少しでも耳を傾けてしまったことが馬鹿らしい。
「そんな事言わないでよ、折角一緒になれたんだから。」
誰がお前なんかと……って、ああ、駄目だ、こんな奴に僕の気持ちなんて分かる筈が無い。
「そうは言うけどさ、君の事を理解出来るのは僕しか居ないと思うんだ」
……人の思考を勝手に読まれるというのはとてつもなく不愉快だという事をこの数回のやり取りで嫌という程理解した、それと勝手に脳内で話されるのも。
「ねえ、僕の事嫌い?」
怒りというよりも呆れの感情が上回ったところで問いには答えず、さっさと布団に潜り込んでこれ以上こいつの好き勝手に話させまいとそのまま意識を手放した。