【ディミレス/サンプル】ミッシング・リンゲージ◇
瞼を閉じれば『彼』が思い起こされる。
もう、九年の歳月が過ぎているにも関わらず鮮明に――。
*
日課の鍛錬のため訓練場へ向かうと、一際賑やかな輪が視界に飛び込んで来る。
「……うーん、こう?」
「いや、こうだろ!」
「そうだな、もう少し構える位置を下に。そうすれば間合いが捉えやすくなって、先手を踏み出せるからな」
輪の中に居たのは数名の少年と青獅子の学級の級長、ディミトリ=アレクサンドル=ブレーダット。どうやらディミトリが少年達に剣の指導をしているようだった。
「分かった、こうだ!」
「……あぁ、そうだ! 皆、筋が良いな!」
「へへっ、やったぁ!」
「よしっ、そうしたら次は狙いをあの木人
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