供物 ミカグラ沿岸部は、つい数十年前までは民家と船ばかりが並ぶ静かな漁村だった。暮らしていたのは6歳ほどまでだったが、海岸に浮かんでいる小型船、漁師の賑やかな声に、年季の入った民家が立ち並ぶ光景を幼心に覚えている。
だが今はどうだろう。モクマの小さかった頃とは、随分様変わりしていた。アッカルド社長による国際化で、活気のなかった漁村はすっかり観光地に生まれ変わっていた。海を臨める最高のロケーションのホテルに、そのそばには水族館など遊ぶに飽きない施設が点在している。
「ほ〜、こりゃまた随分変わったなぁ……や、俺も昔の景色なんて、ほとんど覚えちゃいないが」
ハンドルを握りながら、窓の外を流れる景色を横目で見やる。助手席に座るチェズレイも、いつになくリラックスした表情で言った。
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