「また、貴方ですか」
聞き覚えのあるその低い声のする方へ振り向けば、そこには姿形は人のそれ、だが、昔からの見知った顔がそこにあった。
「・・・・・・アンタさんらの仕事の邪魔はしてねーよ」
見た目は只の青年にしか見えないが、実際には自分たちの存在の次に古い生まれの地獄の鬼だ。
仕事では無いのだろう、記憶の中にある格好より幾分幼い格好をしたその男がチラリとこちらが手にしているランタンに視線を寄越した。
別にまだ何もしてはいないのだが、何だか後ろめたく、隠すように腰へそれを戻す。
「別に私も休暇でこちらに来ているので、これ以上とやかくは言いませんよ」
パーカーのポケットから取り出された最近は見掛けなくなった二つ折りのケータイのボタンをあちらが押せば何処かへ連絡しているようだ。
「ただ、貴方の全ての人間を助けようとするその行動も、いつかは貴方自身を滅ぼすと身を持って知っているでしょう?それに、その足元に転がっているソレもまだ生きていますよ。110番が速いです」
「・・・・んな、便利なモン持ってねーつぅの」
苦虫を噛み潰したような顔をして轢き逃げにでもあったのであろう横たわっている人間に何とか苦痛が少ない体制を取らせる。
「だろうと思いましたので、先に連絡をしました。・・・あぁ、すみません。事故です・・・」
連絡を取っている彼を傍目に上を見上げれば、晴れ渡っているのに、何処か地獄の懐かしい気配がし思わず大きな溜め息が出てきた。