白菜ロール　竜三が台所に立っている。肩まで伸ばした髪をポニーテールに結わえ、慣れた手付きでいくつもの鍋を同時に面倒見ていく姿もすっかり見慣れたものだ。
　竜三に部屋を貸す代わりに、家事全般を任せて家賃を割り引く。こちらとしては面倒な家事を外注でき、竜三は良い環境で食べたい飯を好きに作れるという利害が一致しての下宿だ。
　そのおかげで、以前より健康的になり、弓も心行くまで鍛練できるというものだ。
「センセ、そろそろ飯できるぞ」
「そうか」
　胴着のままのこちらに、振り向きもせず言う。全く、自分で作らずともうまい飯が出てくるとは最高である。
　シャワーの後にテーブルに行くとすでに皿が並んでいた。
「今日はロール白菜と、なめこのみそ汁と冷奴。あと黒豆」

馴れ初め写「始めまして。君が新しいサバイバーか。」

写は手を差し出す。納はそれに軽い会釈で応えた。

納「…始めまして」

写「はは、随分と堅いね。確か君は社交恐怖だったかな。」

納「別に、死人と話すのは平気ですよ。…他に何か用ですか。」

写は納の目をじっと見つめる。

写「ふふ、面白い。君のこと気に入ったよ。私の下に付きはしないか？お互い、協力しようではないか。」

納はあまりにも都合の良い話(冗談だと分かっているが)にため息をつく。

納「…あなたは嘘が下手ですね。僕のことを気に入っただなんて。大体、そんなことを言ったって僕はあなたの弟さんを蘇らせることはできませんよ。」

写は一瞬目を細め、そのあとじわりと笑んだ。

写「…面白い。なぜ私の思惑が分かっている？」