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    namo_kabe_sysy

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    namo_kabe_sysy

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    800文字(前後)チャレンジ
    35
    アル空 起きたくないアルベドくんの話。

    #アル空
    nullAndVoid
    ##800文字(前後)チャレンジ

    35 アル空「アルベド、ねえ、起きてるんでしょ」
    「……起きてない」
    「返事してるじゃん。……ほら、そろそろ支度しよう?」
    「……もう少し」
    「それ何回目だと思ってるの……」
    アルベドの実験を手伝うため、空はモンドにある研究室に出向いた。実験手順の説明を受け、空にわかりやすいように整理されていた器具や薬品についても細かにレクチャーを受ける。一通り聴いた後、アルベドが先導する実験の補佐をやりきった空は、夜も遅くなってしまったからという理由で、アルベドの元で泊まることになった。
    シャワーを済ませて、アルベドと同じベッドに潜り込む。客人用としてベッドはもうひとつ準備されていたが、空には最初から別々で寝る頭はなく、当然のことのようにアルベドの隣に寄り添った。
    『ボクと一緒でいいの?』
    『ダメな理由ってある?』
    『キミをこのまま寝かせてあげられないかも』
    解かれたはちみつ色の髪を一束撫でて、口付けてからアルベドは微笑む。
    『……いいよ。そのつもりでいたから』
    空が言えば、アルベドは目を見開いて、やがて困ったように息をついた。呼吸すると肌に掛かるくらいの至近距離。心臓が大きく震えた時には、空はアルベドに組み敷かれていた。
    たっぷりと蜜を分け合って、夜が明ける。磨かれた窓ガラスから差し込む陽光で目を覚ました空は、背中から回されたアルベドの腕を解こうとした。それを阻んだのが他でもないアルベドで、起きてるの? という問いかけをする。
    起きてない
    起きてるじゃん
    まだ、眠ってる
    寝てたら返事しないでしょ。そろそろ起きようよ
    もう少しだけ
    ……じゃあ、もう少しだけ
    そうやって一度目を許したのがいけなかったのかもしれない。もう少し、がどの程度を指すか曖昧だったが、一応五分程度は待って、空は再び「起きようよ」と腕を解こうとする。
    それでも結果、返る言葉は同じだった。そろそろ片手で数えるのが困難になる回数を繰り返して、空は痺れを切らし、くるりと身体を反転させて、アルベドに向き合った。
    「アルベド、ほら、起きようよ。朝ご飯食べよう?」
    「……もう少し」
    「だーめ、もう何回も待ったんだから。……というか、珍しいよね? いつもなら俺より起きるの早いし、ベッドからもすぐに出るのに」
    思った疑問をそのまま口にする。情事がどんなに激しく長いものになっても、翌朝アルベドがその疲労を残すことはなかった。てっきり今日も起こされる側だろうと思っていたのに、いつもと違う状況に空は首を傾げる。
    「……久しぶりだったから。キミと会うのも、こうして一緒にいるのも」
    「そう、だったっけ……」
    「そうだよ。キミにとっては大した空白ではなかったかもしれないけど、ボクからしてみれば前回からかなり日数が開いてた。……だから今、どうやったらもっとこうしていられるのかずっと考えてる」
    「アルベド……」
    どうしよう。すごくすごく恥ずかしいけど、同じくらい嬉しいなんて思ってしまう。
    余韻を引き摺ってるのは自分ばかりと思っていたのに。朝になったらいつも、昨日のことは昨日のことだと締めくくるようにして起こす彼が当たり前だと思っていたのに。
    ……どうしよう。
    「……空、」
    「ご、めん。ちょっとまって、離れるから」
    「どうして」
    「だって、いま俺」
    灯ってしまった熱に気付かれたら大変だと、アルベドから逃れるために身を捩る。けれど絡まった腕の強さが弱ることはなく、むしろさらに引き寄せられて、下半身までぴたりと、アルベドに密着してしまった。
    「……空」
    「い、言わないでいいから! ごめん、ほんと、……アルベドが、あんなこと言うから」
    「あんなことって?」
    「……どうやったらもっとこうしていられるか、なんて。今まで、言ったことなかったじゃん」
    「そうだね、言葉にはしていなかったかも。でも、キミとの時間がもっと続けばいいのにとは、いつも思ってるよ」
    「ぁ……っ、ん、……んんっ」
    唇をやわく覆われる。隙間を探るような舌使いに、変な声が出てしまう。
    起きなくちゃいけないのに。支度をして、ご飯を食べて、それぞれの日常を始めなくちゃいけないのに。
    腰を撫でられる。腿を辿ったそれが、中心へゆっくりと線を描いていく。
    「空、ねえ、もう少しだけ」
    「――……じゃあ、もう少しだけ、だよ」
    「うん、ありがとう」
    シーツの海に漂って、アルベドが注ぐキスに頭がぼうっとしていく。部屋の中には陽の光が満ちて、夜の気配はどこにもない。日付は新しい数字を更新して、時計の針も午前八時を伝えているけど、これから始まるのは昨晩の続き。もう少しだけ続く、甘いぬくもりを分け合う時間。
    アルベドの白い肌が目に映る。繊細で消えそうな輪郭はそれでも空を力強く抱いて、儚さを打ち消していった。
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    sayuta38

    DONEしょしょドロライ10回目
    (お題9回目)ホワイトデー
    ホワイトデー「この日に手伝いを頼みたいのだが、空いているだろうか」
     鍾離が指しているのは三月十四日だった。特に何の疑問も持たずに二つ返事で魈は了承し、当日鍾離の家へと訪れていた。
    「朝からすまないな。装具を外して上からこれを羽織り、そこの紙袋を持って俺と共に璃月港を回って欲しいんだ」
    「……承知しました」
     凡人に扮して鍾離の手伝いをして欲しいということなのだろう。手伝いならばといそいそと葬具を外し、身の丈程の長い外套を羽織った。紙袋はいくつも用意してあり、確かに鍾離一人で持ち歩くには大変そうだった。
    「では行こうか」
    「はい」
     璃月港を鍾離と共に歩く。何処へ向かうのかと思ったが、三歩程歩いたところで鍾離が女人に話し掛けていた。魈の知らないただの凡人へ、鍾離は紙袋から一つ包みを渡し手短に会話をした後、別れの挨拶をしていた。そして、また三歩程歩いては別の女人へと声を掛けに行っている。何用で女人へ話し掛け、何用で包みを渡しているのか、魈へ説明がなかったので想像もできなかった。これは一体どういうことだろうか。疑問を口にしたくても次から次へと鍾離は女人に包みを渡すべく声を掛けているので、口を挟むこともできなかった。
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