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    namo_kabe_sysy

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    800文字(前後)チャレンジ
    41
    アル空 現パロ軸。コンビニで買えるちいさな幸せの話。

    #アル空
    nullAndVoid
    ##800文字(前後)チャレンジ

    41 アル空コンビニで手軽に得られる幸せがある。それがデザートコーナーで見繕ったケーキやパフェだ。アルベドに感化されたせいか、最近は空も頻繁に買うようになったちいさな幸せ。周囲には複数のコンビニがあるため、曜日ごとにローテーションして商品棚を眺める時間を作っている。
    今日は新作のシールが貼られたいちごのロールケーキに決めた。定番のロールケーキは中央のクリームがホワイトだけれど、新作のいちご味は薄桃色の可愛らしい色をしている。トッピングにはカットされたいちごがひとつ。埋められた赤色のそれは宝石のようにも見えた。
    二人分を手に取って、レジでふたつのスプーンをつけてもらい会計を済ませる。ビニール袋をぶら下げて家に帰り玄関を開くと、カレーの匂いが鼻を掠めた。靴を脱いで急ぎキッチンへ向かうと、エプロンを纏ったアルベドが空を迎える。
    「おかえり、空。……今日も買ってきたの?」
    「ただいま、アルベド。うん、今日も買ってきちゃった」
    ちゃんと二人分だよと袋からロールケーキを取り出す。輪切りにパッケージされたそれを見て、アルベドはぱちぱち瞬きをした。
    「それ、ボクも買ってきたよ」
    「えっ!」
    「見ていたら食べてみたくなって、一応メッセージも送ったんだけど」
    すれ違ったかな、とアルベドが首を傾げるから、空は慌てて携帯を開いた。たしかにアルベドからは「今夜のスイーツはこれだよ」と丁寧に写真付きで送られてきている。
    「ごめん、全然気づかなかった……かぶっちゃったね」
    しゅん、とうなだれる空に、アルベドは気にしないでと微笑んで、手元の鍋をかき混ぜた。
    「明日の分があると思えばいいよ。冷蔵庫に入れておいて」
    「うん……」
    言われ、空は冷蔵庫にロールケーキをしまう。アルベドが買ってきた分とはタッパーを挟んで隣になるように置いた。あまり落ち込みすぎても気を遣わせてしまうだろうからと頭を振って、ぱたりと扉を閉めてから、「俺も手伝うよ」と調理参戦の意を表明する。エプロンの紐を結んでスタンバイすると、それなら、とサラダを作るようお願いされた。
    「レタスと、きゅうり……あとは茹で卵の残りと、トマトも入れてもらえるかな?」
    「まかせて! ……それにしても、カレーの匂いって食欲そそるねえ」
    「ふふ、そうだね。味見してみるかい?」
    「いいの? それなら少し貰おうかな」
    手を洗って材料をまな板に乗せたところで、空はアルベドの隣に近づきぱかりと口を開けた。すると、スプーンに盛られた少量のカレーが運ばれてきて、口の中にはスパイシーでまろやかな味が広がっていく。
    「ん〜……美味しい〜……」
    「それは良かった」
    「アルベド、ほんと料理上手だよね。俺ここまでうまく作れないし」
    それにデザートもだぶって買ってきちゃうし、と唇を尖らせてレタスの葉を一枚ずつむしっていると、コンロの火を落としたアルベドが「そんなことないよ」と微笑む。
    「ボクはキミが作ったもののほうが美味しいと思うし、キミが選んで買ってきてくれたスイーツは自分で買うより美味しく感じるよ」
    「……本当に? というか、スイーツについては俺の力量関係ないんじゃない?」
    「十分あるさ。だって、キミが選んでくれたちいさな幸せだからね。……そうだろう?」
    濁りなく清らかな笑顔を向けられて、思わず声に詰まる。二人の間で共通用語になっていることを言われると、あまり強くは否定ができない。きっと、それすらわかってやってるのだろうけど。
    まんまるなトマトがちらと視界に入る。ああきっと、今の俺はロールケーキの薄桃色なんかより、こっちの赤に近い顔をしているんだろう。見つめられて心を見透かされるたびにいつも、この変化は訪れている。
    「……そうだね。それなら俺も同じだよ。アルベドが選んでくれたものの方が、美味しいって思う」
    「ふふ、本当かい?」
    「本当だよ!」
    おかしくなって吹き出して、それならはやく幸せを食べようとサラダ作りに勤しんだ。アルベドがカレーを盛り付けていく傍ら、空はそっと冷蔵庫の中で眠るちいさな幸せの形を思い出して、頬を緩めるのだった。
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