64 アル空「アルベドってさ、」
「?」
「…なんでそんなに、キス、上手なの?」
「上手と分かるほど、キミは経験があるんだ?」
「ちょっとー、俺の方が質問してるんですけどー?」
「ふふ、ごめんね。……上手かどうかは、ボクにはわからない。こうしたことをするのはキミが初めてだから」
「それにしては慣れてるように見えるけど」
「そうかな?」
ちゅ、
「わ、もう、ちょっと! 俺は真剣に聞いてるのに!」
「わかってる、でもしたくなったから、つい」
「……まあ、いいや。それで、どうなの?」
「そうだな…キミに対しては慣れてきたと思うけれど」
「俺に対して?」
ちゅ、
「ぅ、……んっ」
「うん、それから…」
「…?」
「口づけのたびにそうやって、肩を跳ねさせて、目を瞑ってしまうところとか、」
ちゅ、
「わ、」
「無防備に唇をあけて、舌を見せてるところとか」
ちゅ、
「んっ」
「…キミを観察してると、ここを触ったら反応してくれるかも、って分かるようにはなってきたかな。ただそれが、万人に通用するかは限らないけど」
「…じゃあさ、それって、俺に合わせてくれてるってこと?」
「そうとも言うかな。…ボクはキミと口付けるならどんなものでも心地いいと思ってるけれど、キミもそうとは限らないし。…なるべく、キミを見るようにしてる。キミが気持ちいいと思えるように」
「……」
「……空?」
「……万人に、」
「?」
「通じるかなんて、試さないでね」
「……ボクがそんなことすると思う?」
「しないと思うけど、新たな知見を得られるかもー、とかいいそうだし」
「なるほど、それは一理ある」
「アルベド…!」
「ふふ、大丈夫。……しないよ、誓って。ボクが口付けるのは、たったひとり、キミだけだから」