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    soseki1_1

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    ショタノワ🔮を寝かしつけるリズ🤕先生と不思議な話
    (リズノワ/傭占)

    泣き疲れ、食事をとり、ノワールは草臥れたようだ。食べ終える頃には、その身はうっとりとリーズニングの胸へ寄り掛かるようになっていた。
     口元をナフキンで拭ってやると、リーズニングはその体躯をそうっと抱き上げた。不安げに顔を擡げるノワールの、その背を優しく撫でながら寝室へ向かい、扉を開く。シングルベッドの上に抱えていた身を横たえれば、後は部屋から出て、ひとり煙草を燻らす予定であった。
     けれども予定は失われる。それはひとつの手であった。小さく、赤く腫れており、ナイフさえも握り続けることのできない手。それが、リーズニングの服の裾を必死に掴んだのだ。どうやら無意識のことだったようで、リーズニングが振り返れば、ノワールはぼんやりとしていた目をまた不安げに揺らし、慌てて手を離す。そうして咄嗟に謝ろうとするより前に、リーズニングは見慣れたシングルベッドへと体を潜らせたのだった。
    「狭いだろう。すまないな」
    「い、ぇ…ぼくの、せいだから…」
    「子供が夜を怖がるのに理由はない。君のせいではないよ」
     不安で縮こまる体を抱き寄せ、先ほどと同じように幾度も幾度も背を撫でてやる。徐々に弛緩していく体は暖かく、リーズニングは何かを思い出すようだったが…それが何かはわからなかった。
    「…あの……」
    「どうした」
    「おなまえ、きいても…いいでしょうか」
     ノワールの辿々しい言葉は怯えているためか、はたまた眠りにつき掛けているのか、もはや定かでない。青い瞳はうっとりとした瞬きを繰り返し、体はいっそう穏やかな熱を孕んでいる。瞼を閉じれば今にも眠れるだろうその体を引きずりながら、子供は名を知りたいのだという。体罰に抗えないほど、素直で行儀のいい子だ。律儀でもあるのだろう。ホワイトにそっくりだと…感慨を抱きながら口を開く。
    「リーズニングだ」
    「りぃずにんぐ、さん」
     しかし子供の口には、リーズニングという名は難しいようだ。眠気の為でも、怯える為でもない口振りに、リーズニングは思案する。ここで眠れば、夢から覚めるだろう。なんとなしに、そんな予感がする。この夢の間だけの子供に、何もここまでする必要はないのだろうが……この子供を無碍にすることは憚られた。
    「ナワーブだ」
    「え?」
    「ナワーブと呼べ。その方が呼びやすいだろう」
     ノワールは目を丸めてリーズニングを見遣る。その頬を桃色に染め上げていきながら、少し俯いた。胸に額を擦り寄せ、いじましい様を晒しながら、くぐもった呼び声が聞こえる。
    「…なわー、ぶ」
    「そう、いい子だ」
     久方ぶりに聞こえた名前は、存外過ぎるほど暖かな色を持っている。その音を鳴らした黒い頭を優しく撫でると、いっそう胸に顔を擦り付けられる。結果的に、随分懐かれたようだ。名を呼ぶだけで嬉しがるとはよくわからないものだが、先ほどの青い顔よりは幾分かいい。リーズニングはそう思いながら、頭を、背中を撫で続ける。
    「…なわーぶさん、ありがとうございます」
    「…俺は何もしていないぞ」
    「いっぱい、してくれました。ぼく、忘れません。ずっと」
     無垢たる子供はそう言って、リーズニングに身を預ける。呼吸は徐々に穏やかに移ろっていき、背中の浮き沈みも同様だ。眠りが近いのだろう。随分暖かな身を抱くリーズニングも、それは同様だ。久しくないほど穏やかな眠りが来ようとしている。夢の中で眠るなど、不可思議なことだが。
    「おやすみ、ノワール。お前に良い夢が続くように」
     寝息を立て始めた子供にそう囁いて、目を瞑る。紡いだ言葉は正しく、リーズニングの願いに他ならない。どうかこの無垢でいたいけな子供が、自分の作り出した夢の存在であるように。そうでないなら、少しでも優しい夢を見続けるように。
     そう願いながら、意識を深くへ沈めて行った。

    「先生」

    「先生は心配性ですねこんなところにまで、私を探しに来てくれた」
     幼い体躯が起き上がり、横たわる男を優しく撫でる。夢の中でも隈が目立つ目元はどうにも痛々しく、どうしようもなく愛おしい。
    「私の過去はもう変えられないけれど、先生が願ってくれて嬉しかったです。ありがとう先生。でも、もういいんだ。いいんですよ」
     大人の体を撫でる手は小さく、赤く腫れている。懐かしい、懐かしいという感情さえ忘れていた記憶。
    「先生、どうかよい夢を。あの子供のことは…私と同じように、忘れていいですから」
     今一度身を横たえて、彼の胸に顔を寄せる。聞こえる鼓動は暖かく、触れる体も仄かに暖かい。包まれる感覚に、意識が遠のいていく。こうされたかったという願いと共に。
    「おやすみノワール」
     どうかよい夢を。
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    soseki1_1

    PROGRESS大佐🤕と喧嘩して家出した🔮を匿う副官🧲2
    /現パロ大占傭占
    「ああ、いるよ」
     携帯電話から届く声が誰なのかは判別がつかない。ただキャンベルさんの口ぶりと目線で彼だと解った。彼は眇めたような流し目で僕を見た。
    「僕の家に居る」
     裏切られたと思った。立ち尽くした足が後ろにたたらを踏んで、この家から逃げようとする。だけど裏切られたという衝撃が体の動きを固くしていた。そのうちに、彼は言った。
    「なんで? あげないよ。送り届けてなんてやらない」
     踵を返して走り出そうとした足が止まる。息を止めたままキャンベルさんを見ると、彼はもう僕の方を見てはいなかった。ただ、唇を歪めて厭に微笑んでいた。
    「飽きたんだろ?貰ってあげるよ。常々美味しいんだって聞いてたし」
     怒鳴られてる。とは、漏れ出る音で解った。そういう空気の振動があった。それに構うことなく、キャンベルさんは鬱陶しそうに電話を耳から離すと、液晶に指を滑らせて電話を切った。四方形のそれをソファに投げて息を吐く。僕の、何とも言い難い視線に気付いたのだろう。彼はもう一度目線だけで僕を見た。それが問い掛けの代わりの視線だと解ったから、逃げ出すより前に口を開いた。
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    soseki1_1

    PROGRESS求愛してる白鷹とそれに気づかない夜行梟/鷹梟/傭占
     そもそもの始まりは食事からだった。と、夜行梟は呟き始める。狩りのやり方を教えた頃から、やたらと獲物を取ってきたがると思っていたのだ。覚えたての狩りが楽しいのだろうと微笑ましく思えていたのは一、二年ほどで、そのうちどこからか料理を覚えて振舞うようになった。あれはそういうことだったのだ。給餌だ。求愛行動のひとつだったという訳だ。夜行梟はその真意に全く気付かず、私の料理美味しくなかったかな、悪いことしたな、なんてひとり反省していた。
     夜行梟の誕生日に三段の素晴らしいケーキが出された辺りから、つまりは今年のハロウィーンを終えた辺りから、いとし子は本領を発揮し始めた。まず、夜行梟の寝台に潜り込んだ。今思えばこのときに気付いてもよかった。よかったのに、夜行梟は布団の隙間を縫うように身を潜らせたいとし子に「怖い夢をみたのかい?」なんて昔と同じように声を掛けた。もうとっくに子供じゃなくなっていた白鷹は、このときは未だ我慢していた。「そんなものだ」とだけ言って隣に潜り込み、足を絡ませて寝た。今思い返すと完全に求愛だった。鷹族の習性だ。鳥型の鷹は空中で足を絡め合い、互いの愛情を深めるのだ。鷹族の遠い親戚からきちんと聞き及んだ話だった。のに、思い当たらなかった。まだ甘えん坊さんだな、なんて嬉しく思っていた。
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