Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    soseki1_1

    @soseki1_1の進捗置き場 センシティブもある

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 92

    soseki1_1

    ☆quiet follow

    猟犬🤕に抱いて欲しい一般人イライ🔮(傭占)

     なんでもない接触だ。掌同士が重なるなど、これまでに幾度となくあった。それでも、こんなにもタイミングか重なったことは……おそらくなかったように思う。鼓動の脈打つ音が耳の裏側から強く聞こえてくる。これが彼に伝わってしまわないかが心配だ。この手の温度を期待のものだと悟られてしまわないかも。何もかもが不安の種として残り、期待の起因として浮かび上がる。イライは隣を振り向けなかった。これで、あの色違いの赤と黒の目と出会ってしまえば、自分がどうなってしまうか解らないと思ったのだ。今ですら、耳まで熱くなっているのに。
    「イライ」
     膠着が続いていたイライの思考に、声が飛び込んでくる。近頃耳に馴染んできた声だ。認識する度に、体温を上昇させる声。熱かった耳の皮膚がさらに熱を上げるのを自覚するのと同時、折り重なった掌にも熱を感じ、イライは思わず息を飲む。手の股に彼の指が差し入れられ、掌に指先が回って、握り込まれる。たまたま重なったと言い逃れの出来ない触れ合い。最早愛撫のようですらある手の様だ。
    「イライ」
     心臓の音が大きい。熱の巡る音すら聞こえるような知覚の中で、その声だけが明確に聞こえる。自らの名前がこんなにも熱情に塗れて構成されることを、どうやって今までに予想できたろう? 愛おしい声が熱をもって、自分の名を呼んでいる。その声が酷く近くに聞こえて、イライはゆっくりと、怯えるように、期待するように、隣を振り返る。思った以上に近くで赤と黒の虹彩が自分を見つめていて、また息を飲んだ。
     互いの眼差しが重なり合う。手は握り込まれたまま離されない。テレビはついているのに、ここには互いの息遣いさえ聞こえるような静けさがある。イライは瞬きもせずに、恋人を見つめていた。愛おしい人を、その特異な虹彩を。まるで美しい宝物だとでもいうように、ずっと。
    「っ、わ、ぁ」
     くしゃ。と、乾いた音がする。視界がかくりと下がり、眼前からあれほど見詰めていた虹彩が失われる。音の発生源は自分の頭部で間違いない。というのも、これが髪を掻き乱される音だとイライは正しく認識できていた。彼と付き合うようになって不定期に与えられる愛撫のひとつだ。年下の恋人だからか、ナワーブは時折イライの頭を撫ぜる。今回は髪を搔き乱すような、少し荒々しい撫で方だ。
     緊迫さえしていた空気から一転、間抜けた声を零してしまうほどの現状に、イライはきょとりと間抜けな目をしてナワーブを見る。今一度であった色違いの双眸はにんまりと微笑んで、次いで唇に口づけが落とされた。ちゅ。と、わざとリップ音が立てられるキスだ。ついばむような、可愛くて仕方ない子供に与えられるような軽いキス。その後、髪を整えるように優しく撫でて、手が離れていく。頭を撫でていた手だけでない。今の今までイライの手の甲を握り込んでいた手すら、すげなく。
    「ケーキ、買ってきたんだ。そろそろ食おう」
     一度、二度と瞬く。薄く色の白い皮膚が上下し、間抜けに丸まった瞳に僅かばかりの水分を与えた。それだから、イライの目は正しく映していた。隣に座るナワーブが腰を上げ、キッチンへと歩き去っていく様を。現状を。
    「…………」
     体温が緩慢と下がっていく。平熱へと落ちていく肌に触れる華美な下着があまりにチャチで、恥ずかしいものに思えて、イライはひとり俯いた。
    (今日もダメだった)
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    soseki1_1

    DOODLEナワーブ🤕と喧嘩して家出したイライ🔮を匿うノートン🧲/現パロ大占傭占
     火種って簡単に点くんだなって思った。鼻の先にある、灰色の間からちらちら覗く赤色は綺麗で、心臓みたいだなんて見たことのないものの想像をした。ただ咥えてるだけなのに口の中に煙が溜まるのが不思議だった。吐き出してばかりいたそれを思い切って吸い込んだとき、喉が焼けるような不快感に襲われて咳き込んだ。そこからはもうてんで駄目で、ただ口内に煙を溜めておくだけで僕は咳をするようになった。向いてない。明らかに分かる事実が悔しくて、認めたくなくて、僕は咳をしながら煙草をふかし続けた。
     ひたすら歩いて歩いて歩いた先にあった見慣れたコンビニでそれは買えた。ライターだって簡単に買えた。レジの隣に置いてあった。「煙草を」と言った僕に気怠げな店員は「何番ですかぁ」と草臥れた問いかけをして、僕は、淀み無く番号を言った。彼がたった一度だけ僕の前で言った煙草の銘柄を僕は馬鹿みたいに覚えていて、彼が言わなかった番号まで調べて覚えていた。言うつもりはなかったのに、その番号が口からついて出た。悔しかった。その番号以外知ってるものなんてなくて、店員はスムーズに立ち並んでる箱達からたったひとつを取り出していて、僕は撤回する機会を失った。
    1556

    soseki1_1

    DOODLE本丸傭占奇譚
    「好きな奴が出来たんだと思う」
     言われたとき、なんのことだかさっぱり解らなかった。
    「主」
     そう続けられた言葉でようやく言葉の真意を理解できた。正しくは、広げていた雑誌を読めも見もできず何秒か握りしめ、畳んで、発言した加州清光の方を見て、数秒経ってようやく理解できた。皴のついたページは恋愛特集だった。時の政府が発行している月刊雑誌の中でも恋物語を中心に集めた一冊だ。毎月本丸の、自分の部屋に届くようにしてある雑誌を一文字則宗は横に置く。
    「まじか」
    「たぶんマジ」
     普段使わない一昔前の若者言葉がまろび出る。らしくないとは加州も解っていたろうが全く指摘されなかった。それだけの大事だった。
     この一文字則宗と加州清光が所属する本丸は、端的に言えば素晴らしく堅物なところである。質実剛健を絵に描いたような場所だ。審神者制度が樹立した最初期に設立し、今なお各任務で優秀な成績を残し続け、表彰式に呼ばれ過ぎて参列側じゃなく運営側に回ってしまうような所である。そんな本丸を運営する審神者は、本丸の有り様と同様の人間であった。則宗からすれば朴訥すぎるきらいさえあった。どこぞの国の軍人で、前線を経験しており、かつては大佐と呼ばれる地位にあったらしい。ここまでは本丸の誰もが知っている経歴だ。しかし則宗はもう少し込み入った事情まで知っていた。元監査官の特権だ。最前線を行く審神者の手に渡ると決まったとき、興味を持ってちょっと調べておいた。男には、前線にいたとき作戦の執行に問題があったと難癖をつけられ、結果部下三名を処刑された経歴があった。作戦外で、戦場外で部下を無駄死にさせた経験は男の精神を大層苛み、一時は、というより審神者の招集があるまでは病院に詰めていたらしい。樹立期における軍人経験のある審神者の登用は必死なもので、特に男は指揮力と前線経験のある経歴も申し分なかった。審神者当人は戦場に赴かず、前線に出るのも人間より幾倍も頑丈な刀剣男士だからと何度も説得されて首を縦に振ったらしい。だから審神者になったばかりの頃、刀装なしで初期刀を出陣させる指令にはたいへん反抗的な姿勢を見せたとか。政府に対する三日三晩に渡る必死の抗議と独自に作成したマニュアルにより、この出陣命令は見直され、今は初手の出陣で初期刀が重傷で帰城するようなことは少なくなったのだとか。そしてそういった改善が何件かあり、今では政府
    1292

    recommended works