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    soseki1_1

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    猟犬🤕に抱いて欲しい一般人イライ🔮(傭占)

     なんでもない接触だ。掌同士が重なるなど、これまでに幾度となくあった。それでも、こんなにもタイミングか重なったことは……おそらくなかったように思う。鼓動の脈打つ音が耳の裏側から強く聞こえてくる。これが彼に伝わってしまわないかが心配だ。この手の温度を期待のものだと悟られてしまわないかも。何もかもが不安の種として残り、期待の起因として浮かび上がる。イライは隣を振り向けなかった。これで、あの色違いの赤と黒の目と出会ってしまえば、自分がどうなってしまうか解らないと思ったのだ。今ですら、耳まで熱くなっているのに。
    「イライ」
     膠着が続いていたイライの思考に、声が飛び込んでくる。近頃耳に馴染んできた声だ。認識する度に、体温を上昇させる声。熱かった耳の皮膚がさらに熱を上げるのを自覚するのと同時、折り重なった掌にも熱を感じ、イライは思わず息を飲む。手の股に彼の指が差し入れられ、掌に指先が回って、握り込まれる。たまたま重なったと言い逃れの出来ない触れ合い。最早愛撫のようですらある手の様だ。
    「イライ」
     心臓の音が大きい。熱の巡る音すら聞こえるような知覚の中で、その声だけが明確に聞こえる。自らの名前がこんなにも熱情に塗れて構成されることを、どうやって今までに予想できたろう? 愛おしい声が熱をもって、自分の名を呼んでいる。その声が酷く近くに聞こえて、イライはゆっくりと、怯えるように、期待するように、隣を振り返る。思った以上に近くで赤と黒の虹彩が自分を見つめていて、また息を飲んだ。
     互いの眼差しが重なり合う。手は握り込まれたまま離されない。テレビはついているのに、ここには互いの息遣いさえ聞こえるような静けさがある。イライは瞬きもせずに、恋人を見つめていた。愛おしい人を、その特異な虹彩を。まるで美しい宝物だとでもいうように、ずっと。
    「っ、わ、ぁ」
     くしゃ。と、乾いた音がする。視界がかくりと下がり、眼前からあれほど見詰めていた虹彩が失われる。音の発生源は自分の頭部で間違いない。というのも、これが髪を掻き乱される音だとイライは正しく認識できていた。彼と付き合うようになって不定期に与えられる愛撫のひとつだ。年下の恋人だからか、ナワーブは時折イライの頭を撫ぜる。今回は髪を搔き乱すような、少し荒々しい撫で方だ。
     緊迫さえしていた空気から一転、間抜けた声を零してしまうほどの現状に、イライはきょとりと間抜けな目をしてナワーブを見る。今一度であった色違いの双眸はにんまりと微笑んで、次いで唇に口づけが落とされた。ちゅ。と、わざとリップ音が立てられるキスだ。ついばむような、可愛くて仕方ない子供に与えられるような軽いキス。その後、髪を整えるように優しく撫でて、手が離れていく。頭を撫でていた手だけでない。今の今までイライの手の甲を握り込んでいた手すら、すげなく。
    「ケーキ、買ってきたんだ。そろそろ食おう」
     一度、二度と瞬く。薄く色の白い皮膚が上下し、間抜けに丸まった瞳に僅かばかりの水分を与えた。それだから、イライの目は正しく映していた。隣に座るナワーブが腰を上げ、キッチンへと歩き去っていく様を。現状を。
    「…………」
     体温が緩慢と下がっていく。平熱へと落ちていく肌に触れる華美な下着があまりにチャチで、恥ずかしいものに思えて、イライはひとり俯いた。
    (今日もダメだった)
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    soseki1_1

    PROGRESS大佐🤕と喧嘩して家出した🔮を匿う副官🧲2
    /現パロ大占傭占
    「ああ、いるよ」
     携帯電話から届く声が誰なのかは判別がつかない。ただキャンベルさんの口ぶりと目線で彼だと解った。彼は眇めたような流し目で僕を見た。
    「僕の家に居る」
     裏切られたと思った。立ち尽くした足が後ろにたたらを踏んで、この家から逃げようとする。だけど裏切られたという衝撃が体の動きを固くしていた。そのうちに、彼は言った。
    「なんで? あげないよ。送り届けてなんてやらない」
     踵を返して走り出そうとした足が止まる。息を止めたままキャンベルさんを見ると、彼はもう僕の方を見てはいなかった。ただ、唇を歪めて厭に微笑んでいた。
    「飽きたんだろ?貰ってあげるよ。常々美味しいんだって聞いてたし」
     怒鳴られてる。とは、漏れ出る音で解った。そういう空気の振動があった。それに構うことなく、キャンベルさんは鬱陶しそうに電話を耳から離すと、液晶に指を滑らせて電話を切った。四方形のそれをソファに投げて息を吐く。僕の、何とも言い難い視線に気付いたのだろう。彼はもう一度目線だけで僕を見た。それが問い掛けの代わりの視線だと解ったから、逃げ出すより前に口を開いた。
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    soseki1_1

    PROGRESS求愛してる白鷹とそれに気づかない夜行梟/鷹梟/傭占
     そもそもの始まりは食事からだった。と、夜行梟は呟き始める。狩りのやり方を教えた頃から、やたらと獲物を取ってきたがると思っていたのだ。覚えたての狩りが楽しいのだろうと微笑ましく思えていたのは一、二年ほどで、そのうちどこからか料理を覚えて振舞うようになった。あれはそういうことだったのだ。給餌だ。求愛行動のひとつだったという訳だ。夜行梟はその真意に全く気付かず、私の料理美味しくなかったかな、悪いことしたな、なんてひとり反省していた。
     夜行梟の誕生日に三段の素晴らしいケーキが出された辺りから、つまりは今年のハロウィーンを終えた辺りから、いとし子は本領を発揮し始めた。まず、夜行梟の寝台に潜り込んだ。今思えばこのときに気付いてもよかった。よかったのに、夜行梟は布団の隙間を縫うように身を潜らせたいとし子に「怖い夢をみたのかい?」なんて昔と同じように声を掛けた。もうとっくに子供じゃなくなっていた白鷹は、このときは未だ我慢していた。「そんなものだ」とだけ言って隣に潜り込み、足を絡ませて寝た。今思い返すと完全に求愛だった。鷹族の習性だ。鳥型の鷹は空中で足を絡め合い、互いの愛情を深めるのだ。鷹族の遠い親戚からきちんと聞き及んだ話だった。のに、思い当たらなかった。まだ甘えん坊さんだな、なんて嬉しく思っていた。
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