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    takanawa33

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    悠七 ゲイバーパロ続きの続き

    「……やってしまった」
    携帯を握りしめる七海は洗面台の前で赤く腫れた目元を擦った。
    あのあと、あまりにイイ夜に負けて連絡先を交換してしまったのだ。
    足腰が立たなくなるまで楽しんだ金曜の夜とはうってかわってどんよりとした気分の土曜の朝。タクシーで帰宅し、転がるようにベッドへ辿り着いた七海を待ち受けていたのは液晶に輝く虎杖悠仁からのメッセージだった。
    『昨日はありがとう!ナナミンすっごく可愛かったね、俺、あんなに興奮したの初めてで、引かれてないかな?体は大丈夫?もしよかったら来週の金曜も会えませんか?今度はゆっくりごはんがしたいな。俺、ナナミンのことたくさん知りたいんだ』
    絵文字もなく、真摯なメッセージだ。
    七海としても、あんな抱かれ方をしたらそうそう別の相手で満足できないと分かっている。だからホイホイと誘いに乗ってしまいたい。けれど、けれどだ。
    (相手は学生ですよ)
    三十路になろうとしている男が熱をあげていい相手ではない。
    チッカチッカと光るスマートホンを取り敢えず脇において顔を洗う。まだ疼く中。
    「……よし」
    とりあえずオナニーだ。昨日の興奮を身体が覚えているうちに発散するのだ。
    引き出しから愛用のディルドを持ち出し、スマホをそのままに七海は寝室へ向かった。

    昼のテレビ放送は今旬の芸人が観客を笑わせながら最近のゴシップニュースを読み上げていた。
    肉ともやしをぶっこんだだけというやる気としては最低な焼きそばを啜り、七海はソファに浅く座る。
    「ふー……」
    まだ熱のある体はやる気になれば一日絶頂を繰り返すことができそうだ。それほどまでに青年とのセックスは最高だった。
    ズルズルと胃に収まっていく褐色の麺。ポップアップされたメッセージはまだ既読もついていない。二通目を送ってこない気長さも七海好みで、あの子犬のような顔立ちに反した落ち着き、惹かれてしまう。
    「はぁ……」
    黒ビールのプルタブを爪で開け、缶のまま煽る。まだ疼く内側が返信してしまえ、食事、そのあとセックスだ!そう囁くけれど、理性の男、七海建人は奥歯を噛みしめ携帯を握った。
    「よし」
    テレビは今話題のバルを特集している。青年と出会ったバーの近くだ。二人でいけたら、よかったのだけど。七海の指先は連絡先のリストをタップした。

    「ナナミィ、ちょいちょいちょーい」
    「はい」
    呼び出しにキーボードを打っていた手を止め立ち上がる。
    「あのさぁ、ナナミは来週の金曜日はお暇ちゃん?」
    軽薄な社長に肩を組まれると同時に予定を確認する。
    悠仁と出会ったバーには一月以上行っていない。今は新たな出会いの場を求めて彷徨っている途中だった。
    「はい、空いてますよ」
    「ああ~!よかったよかった!あのさ!実はこの前ナナミちゃんが爆売りしてお金チャリンチャリンさせたお客様いるでしょ?」
    「はぁ、売り時でしたからね」
    「そのお客様がさぁ、一回ナナミに会いたいって言うのよ。その方主催のパーティーにね、きてくれればまたお客さん紹介するよ~って……きてくれる?」
    つまるところ営業である。
    ジトリと見つめてくる七海に社長は両肩を掴んで揺さぶった。
    「わかる、わかるよぉ!ナナミちゃんがそういうの苦手だって知ってるのよぉ!でもさ、ちみが頑張れば会社も儲かる、そしたらちみ以外の社員も助かるのよ……ほら、あそこの席の新人なんて最近結婚したのよ?ご祝儀だと思ってさ~」
    お願い!お願いします!大の大人の土下座など見慣れているわけで、一ミリも心は動かないが社員の生活を少しでも助けるのは悪くない。
    「フーー……場所は?」
    「あん!ナナちゃん大好き!ありがと!チュッ!」
    「やめてください気色悪い……業績出したら一律で賞与くださいよ」
    頬へ唇を伸ばしてくる社長を手で押し退けつつ、七海は予定帳へ三ツ星ホテルの名前を書き込むのだった。

    「いやー!キマってるねぇ!」
    腰を抱いてくる手をやんわりどけて七海は会場へ入る。いつもなら家に帰ってから服を選んでいる時間だが、仕方ない。残業は憎むほど嫌いだが、三ツ星ホテルの食事と交換なら悪くない。引かれるほど食べてやる、新調した白のスーツで柔らかな赤い絨毯の上を歩いた。
    「ところでさ、ナナミは週末とかっていつも何してるの?」
    「それ、言わなきゃいけないことですか?」
    「あ、なんでもないデス」
    まさか男漁りしに歓楽街に入り浸っていますなんて言えるわけもない。七海のジト目に話を引き下げた社長は目的の会場まで口を閉ざす。
    とはいえ、最近はめっきりなのだ。
    虎杖青年との連絡を断ち、贔屓していた店から立ち退いて以来、七海の夜遊びははかどっていない。
    理由は二つ。一つはあそこまで落ち着いた客層のバーを見つけるのが困難なこと、もう一つは悠仁ほど相性のいい男と巡り会えないことである。
    そうなると連絡先を無断でブロックしたことが悔やまれるが一方で三十路の男が恋に狂う見苦しさを見せないで済んだことに安堵する。
    とにもかくにも早く忘れたかった。未だにあの青年との夜をおかずにアナニーに耽る男が言えたことではないが。
    「別に飲んでもいいけどへべれけになるのはやめてね」
    「学生じゃないんですから心配無用ですよ」
    「そうよね、ナナミはそういうの分かってるからね。あ、ほら、いらっしゃった!」
    近づくブランドスーツの男にありったけの笑顔で握手を交わす。あの時は助かったよ、いいえ仕事ですから。愛想笑いと最低限の会話を重ね、相次いでやってくるお客様のご友人こと新たな顧客候補。
    (食べる時間は……なさそうだな)
    チラリと横目で確認する生ハムの盛り合わせに新鮮な魚介のマリネ、湯気を立てる白身のソテーやその場で提供される和牛のステーキ。
    立ち話、終わればやってくる男と握手、会話、終わればその次。
    総資産が億を越える人間回転寿司。けれどそれで腹は膨れないわけで。
    (絶対に顧客にして賞与をもらってやる)
    そしてその金でこのホテルのディナービュッフェにきてやるのだ。笑顔の裏で七海が中指を立てている時、主催の男が戻ってきた。
    「やぁ、七海さん。実は今夜は私の甥がきていてね。いずれ世話になると思うから紹介していいかな」
    「ええ、是非とも」
    手招きする男は名前を呼んだ。

    「悠仁、きなさい」

    まさか、とは思いつつ、手招きする先へ視線を送る。
    (ああ……)額に手を当てたくなった。もし、神がいるなら相当底意地が悪い。いや、むしろ毎週のように男と蛮行に耽る七海への正当な評価なのだろうか。
    「こんばんは、虎杖悠仁です」
    差し出される右手を握りかえす。
    「……こんばんは」
    「ふふ、久しぶりだね、ナナミン」
    ギュウ、と痛いくらいに握られる手。
    「なんだ、二人は知り合いだったのか」
    「うん、前にちょっとね」
    会えて嬉しいと笑う青年の瞳の中で細くなる瞳孔がまるで狩りに興奮する獣のようで、七海は左手に滲んだ汗を握りこむのと同時に生唾を嚥下するのだった。
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