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    takanawa33

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    takanawa33

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    黒ギャルパリピゆじパロ① 悠七

     アイボリーのサマーニットにホワイトのチノパン。メッシュ生地でできたスニーカーを素足のまま履いて海岸を歩く。
     平日だというのに海辺にチラホラと見えるサーファーに混じるにはお世辞にも適しているとは言えないスタイルで七海は海を見ながら散歩していた。
     在宅ワークを抜け出して昼の散歩。海が見える家を買ったせいか時間が空けばぶらつきたくなる。クライアントとの電話会議もなし、仕事が詰まっているわけでもない、こんな初夏の日はぶらぶらと散歩をするに限るのだ。薄いべっ甲色のサングラスをかけ、うまく波に乗る海の住民を見つめる。
     夏の始まりとはいえ最近の太陽光は容赦がない。白い七海の肌をじりじりと焼く日差し、額に手を当てずっと先にあるコンビニに狙いを定めようかと思うけれど、そこで馴染みの炭酸水を買って飲むのはあまりに風情がない。せっかくなのだから何か面白いものはないものか。だってこの炎天下の中わざわざ外に出たのはその『面白いもの』目当てなのだから。
     とはいえこの外気の熱と七海の好奇心とでは分が悪い。諦めて涼しいコンビニを避難所としようか、そう思った時。視界の端に『氷』の旗がヒラヒラと翻っているのが見えた。
     白く塗装された木材で簡素にできたその小屋。七海は知っている。海の家である。
     こんなおじさんが入っていいものかしらん。けれど海を見渡せど人は少ない。これなら客数はたかが知れる。実はいつも入ってみたいとは思っていたのだ。けれど立ち寄るたび際どいビキニの女性やらピアスに気合の入った肌をした男性やらでひしめいているのを見ては諦めていた。けれど、もしかしたら、今なら。
     夏だもの、少しの冒険くらいしてみてはいかがか。七海は自分を奮い立たせた。
     小屋は簡素なものだ。デッキのような日当たりのいい場所にプラスチックでできた椅子とテーブルが二組。中には長方形のテーブルとそれを囲む椅子が三列。客はいない。ホッとしながら七海は中に入る。
     メニューは年期が入っているのか、はたまた潮と熱で傷みやすいのか、クリアファイルに入ってシワシワになった手書きの紙がぺらりと一枚。こういった場所ではぼったくり価格が適正価格かと思っていたが、ここは良心的だ。それともライバル店と差をつけたいのか七海が驚くようなお値段設定ではなかった。
     やきそば、五百円。コーラ、二百円。かき氷、百円。ただし練乳をかけるとプラス五十円。なるほど、どれも海にきたら口にしたくなる。七海が案外綺麗に書かれた手書きの紙を見ていると、キッチンから出てきた青年が声をかけてきた。
    「あ、こんちは~! 言ってくれればいいのに、全然気付かなくてごめんね」
     出てきた瞬間、日焼けした肌を剥き出しにした上半身、染めたのか、えらい元気なピンクの髪に耳に三個ほど空いているゴールドのピアスに心臓が激しく動揺したけれど、声を聴いて七海は浮いた尻を戻す。
    「あ、いえ、すいません。営業中ですか」
     もちろん、と笑う青年は軽快な動きでキッチンから出てきた。遠目から見ても分かる鍛え上げられた上半身とそれを支える太い下半身を隠す白いエプロン。どうみても温和な接客をする容姿とは思えないが彼の笑顔は何故か人を和ませる力があった。
     だから七海は安堵して「ここは当たり」だと胸の中で唱えながらメニューを指さす。
    「コーラ、いただけますか」
    「はいよ、ちょっと待ってて」
     くるりと反転する彼の尻は競泳のようなタイトな黒の水着に覆われていた。エプロンで見えなかったけれど、当たり前だが服は着ていたようだ。
    「お兄さん、散歩?」
     キッチンの冷蔵庫がガチャンと開く。そこから取り出される瓶コークは熱さにすぐに汗をかきながら水滴をポタポタ床に落とした。青年はそれを清潔そうなタオルで拭い、同じく冷蔵庫で冷やしてあったグラスと一緒に七海に差し出した。
    「ええ、ちょっと歩いていたら喉が渇いて」
    「まだ夏始まったばっかなのにめっちゃ暑いもんな」
     はい、と栓抜きで開けられた瓶と冷えたグラスを渡され、七海は手酌で注いだ。冷えた炭酸水からのぼる白い煙。ああ、これだ。同じ味でもコンビニでこれは手に入らない。
    「……ここは、いつから営業しているんですか」
    「先週かな~、俺の大学が休みになったから爺ちゃんの手伝いでここ開けたの。ほら、そこの民宿あるじゃん、あれが爺ちゃんが経営してるとこ。こっちはおまけ的な?」
     なるほど、七海は頷く。
    「お兄さんはおやすみ? それともお仕事さぼってきたん?」
    「私は……どちらとも言えないですね。家でフリーの仕事をしていたのですがふと思い立って散歩に出ました」
    「うは、悪い大人だ」
    「大人はみんなそんなもんですよ」
     パチパチ弾ける炭酸の刺激に暑さで苦しかった喉が生き返る。それに、七海の正面に座って人懐こそうに話しかけてくる青年と会話をしていると自然と笑みがこぼれた。
    「俺、虎杖悠仁、お兄さんは?」
    「……七海建人です」
    「じゃあナナミンだ!」
     じゃあ、もなにもないけれど抵抗するのは面倒なので「ご自由に」とコーラをまた一口。波の音、潮の香り、そして口でシュワシュワ弾けるジュース。
     夏はこれだ。これが最高なのだ。冬の灰色の海もいいけれどこの青、白のコントラスト。それに。
    「ん、どしたん?」
     ニコリと微笑む悠仁に七海は首を振る。今年は当たり年だ。間違いない。
    「あ、ナナミンさ、たこ焼き食う?」
    「いえ、けっこうです」
     案外ちゃんと営業もするのだな、と思った矢先悠仁は慌てて口を開いた。
    「あ、ちがうちがう、俺がおやつに食べようと思ったんだけど一緒にどうかなって、もちろんお金はとらないし」
    「それ、お店としていいんですか」
    「いいのいいの。これ爺ちゃんの道楽でやってる店だから。値段も安いっしょ。本業でうまくいってるから遊んでんの、爺ちゃん」
     ちょっと待ってて。そういって立ち上がった悠仁はキッチンのコンロをつけ丸い穴が開いた鉄板をよいしょとセットする。そこに油を引いてキッチンからバケツに入ったタネを取り出した。
    「油、飛んだら痛いですよ」
     上半身が未だ曝け出したままの悠仁に声をかける。
    「大丈夫、慣れてるし服着るとただでさえここ熱いしさぁ~」
     ガスで点火されたコンロは火力が強いらしく、悠仁との他愛ない会話を楽しんでいる間に熱されていく。「いいかな」と悠仁が独り言のような、七海に少し会話を中断すると宣言するような言葉を発するとたこ焼きのタネを流し込み、鉄板にジュゥウウウと水が弾ける音を響かせた。
     それから出来上がるまでしばらく、再び悠仁の大学の話やら、海での笑い話やらを聞きながら七海は残りのコーラをちびちび飲んでいた。会話をしたいけれど恐ろしくジュワジュワと跳ねるたこ焼き器の前では七海の声なんて通るわけがない。悠仁の心地よい声をラジオ代わりにうんうんと頷くだけだった。
    「ほい、熱いから気ぃつけて」
     鰹節が踊る粉もの球体。隣に座る悠仁が皿に置かれたものを差し出した。湯気をもくもくと立てるソレを七海は割りばしでフーフーと何度も冷ましてからようやく一つを口に入れたというのに、悠仁の口はどうなっているのか、どう考えても口内温度より遥かに高いソレをヒョイヒョイ口に入れていく。
     そしておやつと称した三十個ほどのたこ焼きを難なく食べ終えた悠仁はまだ十個のうち三個しか口にしていない七海を見つめながら口を開いた。
    「……あのさ、ナナミンって、恋愛対象がマイノリテ?」
     四個目のたこ焼きを噴き出しそうになったがすんでのところでコーラを口に含んだのでなんとか事なきを得る。
    「あの、それは、なぜ」
    「怒らないんだ。じゃあ正解?」
     ニッコリ笑う悠仁に七海は視線を泳がせた。マズい。そういうことを聞いてくるということは、つまり悠仁も『そういうこと』だ。
     しかし七海には「イエス」と素直に言えない事情がある。それはこんな海の近くに家を構えておいて、それなのに海辺のナイスガイたちを遠目に見ているしかない理由。
     七海はボトムなのだ。いわゆるネコ、寝子である。つまり受け身側を希望しているのだけれど、悲しいことに七海の容姿、体格、声、スペック、性格、ありとあらゆるハイスペックステイタスのせいで寄ってくるのは同じくボトム希望のキティパピィばかりなのだ。最初こそ代わりばんこでセックスしてくれないかしらんとサービス含めてトップを請け負ったけれど、七海のビックサイズなソレに魅了されたセックスパートナーたちが逆をやってくれることがなく、ここ数年七海はトップしかこなしていない。
     受け入れたい欲望はある。けれどどいつもこいつも七海に抱かれたい抱かれたいと寄ってくる性嗜好の人間ばかりなので七海は最近では自分の満足のいくセックスはできないのだと納得することにした。
     だから仕方ない、体格のいいグッドルッキングガイが集まるこのビーチに住み、日々目の保養をしては家で自分を慰めたりする毎日である。
     そんなわけで七海は『ゲイか』と問われれば肯定せざるを得ないのだが、その質問がくるとなれば最終到達地点は『今夜どうか』となるわけで。その今夜が今までの経験上トップを求められることが多いから非常に悩んでしまうわけである。肯定すべきか、否定すべきか。
    「沈黙は肯定でいい?」
    「いや、あの」
     困った。非常に困った。眉間に皺を寄せる七海に悠仁は笑った。
    「アハ、普通の人だったらすぐ否定するよ。悩んでる時点で分かりやす! ナナミンってウソが下手なんだね」
     ああ、判断が遅い。七海は五個目のたこ焼きを口に入れる。
    「……それで、私がゲイだからってなにか?」
     ああ、せっかく『あたり』の店だったのに。七海は心の中で心底ため息を吐いた。けれど。
    「ナナミン、ヤりたくてビーチ歩いてたでしょ。めっちゃメスの顔してるもん。丸わかり」
     にこぉ、七海を見つめてくる琥珀色の瞳。
    「ねえ、ナナミンってめっちゃくちゃ俺のタイプど真ん中なんだ。さっきから突っ込みたくて勃起止まんねぇの。あっちでちょっと遊ばない?」
     チラリ、分厚い白いエプロンを捲ると、そこには真っ黒な水着を押し退けながらそそりたつちんぽ。雄の象徴が布越しでも分かる凶悪さで自身を主張しているのだった。
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