オレのシリウス星人 暗い部屋にデスクライトが煌々と光り、まろい頭を照らしている。人も街も眠りつき、カリカリとスチールが紙を削る音だけが響いている。
「ケチャップ、寝るぞ」
「……うん」
返事はしたものの視線は机上から動かない。時計の針は真上をとうに過ぎてしまっているが、まだ眠る気は無いようだ。
地上に出て数年。今では、同じ家で暮らしている。『同棲』という面映い響きにも慣れ、お互いに仕事やプライベートでの付き合いでのすれ違いや喧嘩もしてきたが、今のところ特に大きな問題は起こっていない。そんな日々を過ごしているとパートナーのあらゆる顔を知ることになるのだ。そう、今まさにケチャップのその一端が顔を出している。
諦念や怠惰といったものは彼を取り巻く環境によるものであって、ケチャップはもともと好奇心旺盛で物事を突き詰める研究者としての気質がある。今回は何を追い求めているのか。ここ数ヶ月、仕事から帰ると寝食も忘れて小難しい資料とにらめっこしている。
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