blouson, pierce, pins 少し狭い路地を一歩入れば、さっきまで全身を包むように聞こえていた喧騒が一気に遠くなった。十四は、先を歩く自分の目線より少し低い背中のナゴヤ城を見失わないように小走りで追いかける。
「っと、ここだ」
「こんなところにお店があるんっすか?」
「おうよ。知る人ぞ知るってやつだ」
空却が立ち止まった少し古い建物はまだ昼間だというのに薄暗く、この路地へ迷い込んだ人を誘うように口を開けて佇んでいた。行くぞと中へと進む空却の後に続く十四は、不安そうに眉を下げながら左腕ではアマンダを抱え、右手ではそっと前を歩くスカジャンを掴んだ。
空却が足を止めたそこには店の名前も書いていないアルミ製の扉が一つ。そして躊躇いもなくそれを開いた。
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