慎ましく今日を祝いたい。
そのために病院の仕事も学会も全てを調整し手に入れた時間を、トラファルガー・ローは有益に活用していた。年に一回だけのこの日を、より特別なモノとするためにと、キッチンに立ち予定の献立を粛々と用意していく。
ミキサーしたトマトと夏野菜をさらに裏漉ししボウルに入れ、一旦冷蔵庫へとしまう。
オーブンの中には、ハーブを仕込んだ鯛の塩釜を入ってる。焼くのは後だ。今日の主役が帰ってくる時間に合わせて焼き上げるように、と思うと口端が緩むのを自覚する。
朝の様子を思えば、ローや他の人の誕生日を忘れることはないのに、自身のこととなると意識が薄い恋人は今年も今日がなんの日か忘れていることだろう。
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