魔法の言葉「なあ師匠」
不満気に名を呼ばれ、マトリフは目を開ける。椅子に腰をかけて本を読んでいたつもりが、いつの間にか眠っていたらしい。
「ここんとこ、よくわかんねえんだけど」
既に日は傾いていた。ポップは出した課題に真面目に取り組んでいたらしいが、やはりと思う箇所で躓いていた。
「そこらへんに積んだ本のどれかに書いてあらぁ」
「適当すぎだろ。せめてどの本か教えてくれよ」
言いながらもポップが手に取った本はまさに答えが載った本で、生来の運の良さか、あるいは見当がついていたのか、どちらにせよマトリフの助言は必要なかった。
ポップは本を開いて読み始める。それと同時にコーヒーメーカーをセットしていた。二人分を沸かすつもりだろう。まあ飲んでから帰るかと、マトリフは立ち上がるのをやめた。
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