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    sikabaneruirui

    刀や槍の擬人化男士同士のカップリング・リバ表現(たぬむつたぬ、おてかり等)多め、gifアニメ有
    R18は描写濃いめ傾向なので注意です

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    POIPOI 46

    sikabaneruirui

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    おてかりちゃん夏のときめくひととき。
    挿絵がついています→https://poipiku.com/4341991/8380198.html

    ##おてかり

    ノウゼンカズラとおてかりちゃん(小咄)昨日までの曇天雨天とは打って変わり、青空に浮かぶ雲は夏らしい陽光に照らされ一層白く際立っている。
    少し日向にいるだけで汗ばむ陽気だが、石畳に落ちる梢の影がざわわと音を立てて揺れると、すうっと汗がさらわれていく。
    板塀に囲まれた総本丸の正門から路地をいくつか挟んだ場所に、かつては迎賓用だったらしい小ぢんまりとした洋館が建っていて、今は周辺の住民や刀剣男士たちが公民館のように利用している。見知った男士たちが筆記帳を手に玄関前の段差を下りていくを見るに、今日も何かしかの集会が行われていたようだ。
    内番帰りの御手杵は敷地の煉瓦塀越し、それを横目に歩いていたが、ふとあるものを目に留めた。
    洋館の側面の白っぽい外壁に沿って、木製の柱が格子状に組まれた藤棚のようなものが誂えられていて、しかしそれを伝い覆うのは藤ではなかった。
    降り注ぐ日光を受け、鮮烈に映える赤い花の滝。
    鳥の羽のような形をしたつややかな葉が幾重にも折り重なり格子の隙間を埋め、葉の中から飛び出た枝にはふちが五つに裂けたラッパのような花やつぼみがみっしりと取り囲んで、重そうに垂れ下がっている。
    今年もここの花が咲く時期かぁと足を止めているうち、強い日光でじりじりした頭の天辺を少し休ませようと思い立ち、憩いの場として開かれている庭へ踏み入って、花房の暖簾をくぐる。
    もう少しで頭をぶつけそうな天井を見上げると、日差しが透ける葉の重なりに鳩くらいの鳥がいるようで、木漏れ日の間をごそごそとしているのが見えた。日向のほうに向かい咲いている花には蜂が忙しなく蜜を集めに来ている。
    ふう、と一息ついて、目の前に垂れ下がった花の房ごしにまぶしい表を木陰から眺めていると、頭上にいた鳥が突然ばたたっと羽ばたいて飛び立つ気配があって、直後に強く風が吹き、葉擦れの音がざわついた。
    ぽとり。
    「おっ?」
    何かが頭に当たり、肩のあたりに落ちてきたのを反射的に受け止めると、それは上のほうに咲いたものが鳥の翼にはたかれたか、風に揺らされたか、はたまたその両方か。まだ新鮮な花の一輪。
    改めてまじまじと見れば、深く落ち込む中心部が黄色く、花弁は橙色、緋色と混じり、放射状に朱の脈が走る、燃え盛る炎のような花だった。

    (おや)
    にっかり青江が洋館の一階にある備品室で、講義に使われたキャスター付きの黒板を片付けていると、硝子窓にひかれた薄物のカーテンの隙間から、凌霄花を這わせたパーゴラの下に入ってくる背の高い人物に気が付いた。
    「ありがとう、これで後始末は終いだね」
    窓の向こうの背中に意識を取られていると、背後の扉から今回の講義の主である南海先生こと南海太郎朝尊が顔を出し、礼を告げられた。
    「先生ェ」
    「ああ、肥前君。わざわざ迎えに来たのかい?」
    「借りた鍵忘れんなよ、って言いに来たんだよ」
    廊下の先から肥前忠弘のぶっきらぼうな念押しの声が聞こえ、彼もああ見えてしっかり脇差してるよねぇ、とほくそ笑んで、窓の外をもう一度見た大脇差は、備品室の扉を閉め、やや早足で玄関へ向かった。
    内履きから靴に履き替え、玄関のポーチから出てパーゴラのある外壁のほうへ回り込んだ時。羽音とともに飛び立つ影が頭上を飛び越し、ざあと吹いた風に花をまとわせた枝の簾が揺れて、木陰の下に隠された彼の横顔が覗いた。
    「蜜でも吸っているのかい?」
    近づきながらその姿に声をかけると、一輪の花をつまんで観察していた御手杵の目がこちらに向けられ、瞬きした。
    「え、この花、蜜が吸えるのか?」
    「いいや、知らないんだけどね。」
    すこし本気で期待をしたらしく、唇が尖る。
    「なんだよ。…あんたは、ここでなんかしてたのか?」
    「南海先生の講義にね。手伝いも含めて」
    御手杵は、あぁ。と頷いて、花の根元を挟んだ指をすり合わせてくるくると回し、青江のほうに体を向けた。
    「片づけをしてたら、そこの窓から君が見えたものでね。ふふっ、そしたら、茂みに隠れて花の蜜でも吸っているのかと…」
    意味ありげな含み笑いには構わずに、言葉尻を待たぬまま伸びた腕。何をするのかと視線だけで動きを追うと、持っていた赤い花をこめかみにあてがわれ、少し傾いで覗き込まれて、
    「うん、似合ってるぞ」
    と、屈託なく笑ってみせられた。
    彼の行為に特に他意は無いのだろう。花が季節に合わせて咲き、鳥が飛び立ち、風が吹いて、彼と自分がたまたま居合わせる、そのようなことなんだろう。
    背の高い彼の胸のあたりから見上げれば、垂れた花房のひとつがふわりと髪の毛に寄り添って、木漏れ日とともにその笑顔を彩っていた。
    日陰であるにも関わらず、眩く見える目の前の光景をできるだけ留めていたくて、

    (君のほうこそ、似合っているよ)

    胸に留めて、目を細めた。
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