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    たると

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    たると

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    生誕の日と年の瀬、また来年貴方と年末年始、普段何かと多忙であるタルタリヤと数日ほど共に過ごせるとあって柄にもなく鍾離は浮かれていた。

    まずは共に過ごす自身の塵歌壺内の邸宅を掃除しよう。そう思い立って収集品の保管されている部屋で骨董品を磨いたり、書斎の書物を開いたり貴重な植物などの世話をしたりしていた。
    そして12月31日の今日、訪れたタルタリヤはこう言った。
    「先生、それは掃除って言わないよ」

    開口一番そう言ってタルタリヤは手際よく邸宅の奥で眠っていた清掃用具を手に取り掃除を始めた。
    はたきで埃を落とし軽く掃き掃除をしタルタリヤの傍らを浮遊する空鯨が雑巾で拭き掃除をするという見事な連携で室内を綺麗にしていた。
    「公子殿、何か手伝う事はあるか」
    「先生は目移りして他の事をするタイプだから、取り扱いに注意が必要なものだけ見てくれれば良いよ。相棒のアルバイトを手伝った時もすぐ脱線してたし」
    「む…そうか」
    伝説のアルバイトイベント。
    そういえばそのような事もあった。凡人として暮らし始めた鍾離としては得難い経験であったし旅人や公子と共に働くのは面白いものであったが、確かに思い返すと本来の目的とは異なる行動も少々取っていたかもしれない。また機会があれば留意しよう。

    掃除も終わり食事時、タルタリヤが稲妻で教わったという年越し蕎麦なるものを食したり同地の名産や酒などでゆっくりとした時間を過ごして。公子殿は嫁力が高い。

    「先生、お誕生日おめでとう」
    タルタリヤが鍾離に手渡したのは毛糸で編まれたマフラー。薄めの茶色ベースに金糸の毛糸で全体に岩元素のマーク、端には濃い茶色と橙色で鍾離の創造する岩柱の模様が織り込まれてる。
    「ほう、見事なものだ。これは玉璋シールドを参考にしたのか」
    「鍾離先生のイメージとして真っ先にそのシールドが思い浮かんだんだよね。一緒に戦闘する時はいつも張られてるからある意味もっとも身近な感じだし、帝君柄は市販で大々的に売り出されていたからね」
    なるほど、そこまであのシールドが公子にとって身近となっていたとは。共に行動する際には必ずといって良いほど逆飛びの流星を着けさせた甲斐があったというものだ。しかし帝君柄マフラーが市販品で売り出されているとは…そういえば何やら行列が出来ている店を見掛けたし、見知った顔が数名最前列に並んでいた気もする…。
    「公子殿の時間を数日共に過ごせるなく、手ずから編んだ贈り物まで貰えるとは人の子の風習も良いものだな。」
    「ふっ、はは、先生そこはもっと単純で良いんだよ」
    「ふむ…、ああそうだな。俺は今とても嬉しいんだ。公子殿を今にも伴侶として迎え入れたいくらいにな」
    「今はまだダメだよ、先生」
    "今はまだ"という事はいつかは良いのか。
    つまりは稲妻の本に書かれていた"脈あり"というものか。
    「ははっ、来年はより一層励まねばならんな。よろしく頼むぞ公子殿」
    「こちらこそ、よろしくお願いします、鍾離先生。…でも年始めくらいはお手柔らかにお願いしたいなぁ」
    「ふむ、なるべく善処しよう」
    「それは全然善処しないやつだよ、先生。まあ今日は俺もプレゼントみたいなものだ。先生の好きなように堪能してくれて良いよ」
    「ああ、ありがとう公子殿」

    二人の手が重なり部屋へ向かうのを青い鯨が見守りながらもうすぐ年の瀬を迎えようとしていた。








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