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    はるつき

    @htso917

    左右完全固定派字書き。
    ロカリュ(SN2)とちーとど(忘バ)多め。時々シンセイ。
    可愛い攻めとかっこいい受けが大好き。
    リアクションありがとうございます!

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    はるつき

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    ちーとど。
    藤堂姉妹に外堀埋めるどころか塀まで建てられて逃げられなくなった話。
    どうしてもFAの一環としてシルバニアがカバンから出てくるあおいちゃんエピソードを入れたかった。

    両片思いが強制的に両思いになるちーとどの話日曜日の昼下がり、藤堂家に千早は手土産を持って訪れた。
    何度も来ているはずなのに緊張した面持ちでインターフォンを鳴らす。
    「はーい」
    直ぐに可愛らしい少女の声がしてがちゃりとドアが開いた。視線を下げた先には藤堂の妹が向日葵のような笑顔で千早を出迎えていた。
    「しゅんくん!いらっしゃい」
    「こんにちは×××ちゃん。これみんなで食べてください」
    少し屈んで目線を合わせて紙袋を差し出す。小さな手が嬉しそうに受け取って胸に大事そうに抱えて姉に報告に行く背中を見送るのと入れ違いに本命が現れた。
    「別に気ぃつかわんでいいのに。上がれよ」
    「家にあった余り物ですからお気になさらず」
    部屋に先に通されたかと思うと息をつく暇なく部屋のふすまがすっと開いた。視線を向けると妹が小さな両手いっぱいにお菓子と女児向けの玩具を抱えて入ってくる。躓きかけたのが見えて思わず手を差し伸べた。どうにか転ばずに済んでテーブルにお菓子をそっと置いて、妹は千早の膝の上に腰を落とす。だいぶ懐かれている事実に千早はじわりと頬が熱くなるのがわかった。
    「しゅんくんクッキーありがとう」
    「喜んでもらえたなら良かったです。それ、可愛いですね」
    「クリスマスにサンタさんから貰ったの」
    そう言ってテーブルの上にシルバニアのうさぎの一家が勢揃いで並べられるのを千早は静かに眺める。先日藤堂のカバンからうさぎのお母さんが出てきて泣くほど笑ったことを芋づる式に思いだし自然に口角が上がった。
    そうとは知らない妹は笑顔の千早に気を良くして一匹一匹丁寧に紹介していく。相槌を打ちながらこの光景を藤堂に見られたらどんな顔をするのだろうかと考える。驚くだろうか。からかうように笑うだろうか。
    そんな最中、思ってもいなかった言葉が鼓膜に突如飛び込んできて千早は固まった。
    「しゅんくんはあおいにーにのこと好き?」
    「へっ!?」
    「あおいにーにのこと、好き?」
    無垢な今にも零れそうな大きな瞳が千早の狼狽える瞳をまっすぐに見つめてもう一度聞いた。
    それにどう返答したら良いのかわからず、質問の真意も掴めずそれでも何か返さなければと必死に考える。手先は血の気が引いていくのに顔だけが熱かった。
    (『実のところ友達以上の意味で好きです。藤堂くんが困ると思うので一生言わないですけど。』なんて言えない。こんな小さい子が恋愛とかまだ知ってるわけ無いんだからそういう意味でないよな?というか家族の前で嫌いですよなんて言えるわけ無い…!最適解は一つ…!)
    長尺の思考は永遠にも思えたが実際は5秒間だった。
    「すっ…好き、ですよ…?」
    スマートに答えるはずが思わず声が上擦った。彼のことをめちゃくちゃ意識していますと誰が聞いても分かる非常にダサい返事。千早は自分で言って精神に大ダメージを負ったが妹はその様子に全く気づいていないのだけが救いだった。
    「わぁっ」
    にぱーっと今日一番の笑顔を見せたかと思うとすくっと立ちあがり部屋を出ていく妹を千早は視線だけで見送った。姿が見えなくなった直後家中いっぱいに響く元気な声が千早と台所にいた藤堂の耳をつんざいた。
    「よかったねあおいにーに!しゅんくんもにーにのこと大好きだってー!」
    「は……ハァァ!??」
    ガシャーン!と台所で藤堂がなにかを盛大に倒した音がすぐさま響いた。突然の第三者による想いの暴露に千早がバタリと倒れ込むのと姉の怒声が響いたのは同時だった。
    「うるせーぞ葵!恋人できたくらいで一々動揺すんな童貞!!」
    「あっ姉貴には…かっかんけーねーだろ!!」
    狭い団地の屋内では何をするにも言うにも筒抜けで千早は今直ぐにこの窓を突き破って逃げ出したかった。
    姉妹のセリフがグワングワンと脳内を巡る。

    「しゅんくん『も』にーにのこと大好きだって―」
    「『恋人』ができたくらいで―」

    つまりそれは?と羞恥で熱い顔を手で覆いながら畳の上を転がって考える。
    自分の藤堂への想いを知られてしまったということで、そして藤堂葵本人も千早と同じように想っていたことにほかならないわけで。
    その上藤堂家の過半数に知られほぼ家族公認という太鼓判まで押されてしまった事実があった。
    「〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
    じたばたと人の家だというのを忘れて悶えていると近づいてくる足音に千早は我に返った。
    すっと体を起こしずれたメガネを指先で直しながら『何もありませんでしたけど?』という顔を必死で装う。しかし入ってきた藤堂の顔が赤らんでいて動きもぎこちなかったのでその装いは直ぐに剥がれ落ちる。熱を持った赤い顔を隠すように俯くと藤堂が千早の正面に腰を下ろしたのが見えた。
    沈黙が流れるが藤堂の顔をまともに見れない。しかし今此処でなにか言わなければと断腸の思いで千早は口を開いた。
    口も喉もカラカラに乾いていていつもは饒舌に動く舌がもつれ声が震える。
    「……その…藤堂くんそういう意味で俺のこと好きだったんですか?」
    「……一生言う気なかったわ…忘れろ」
    快活とは程遠い蚊の鳴くような声で返されてそんなところまで一緒だったとは思わなかったと千早は胸が一杯になる。
    「俺もそういう意味で好きっていったら……どうします?」
    「……ヨロシクオネガイシマス?」
    「……コチラコソ?」
    なし崩し的に行われた世界一格好のつかない告白。
    晴れて恋仲になったいっぱいいっぱいの二人は開いた襖の隙間から顔を見合わせて微笑む姉妹がいたことに気づかなかった。
    姉により「もう完全に出来てると思っていたのにまだ付き合ってないとか抜かすのでイラッとしたからやった。」と供述されるまであと3分。
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