8.2 宴は好きじゃない。
酒も好きじゃないし、踊り子にも興味はない。忠義を示す手段として参加しているだけで、国王の『楽しみ』をバッキンガムは理解できなかった。
王弟である彼もそうだろう。ダンスの輪に加わるわけでもなければ、酒樽を空にするわけでもない。兄にならって女をそばに置くこともなく、いつも壁の隅でつまらなそうな顔をしている。
彼はバッキンガムと同じだった。
だから、きっと、今日も、夜の帳よりも暗い色の服をまとい、人目につかぬ物陰で、ただ静かに時が過ぎるのを待つのだろう。
そう思っていた。
思っていたのに、領地から王宮へと赴いたバッキンガムが目にしたのは、長い獣の耳の飾りを頭に付けた彼の人の姿だった。
1904