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    劣情絵とか立ち絵の差分とか置いてます。

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    付き合ってる世界線の真翔です。真下が翔くんに甘い。
    ちょっとだけキスシーンあります。
    いつも通り短いです。

    夏の夜を、君の隣で一緒に花火を見に行きたい。
    ある夏の日の午後、長嶋にそう誘われた。
    先ほどからやたらと落ち着きがないというか、そわそわしていたのはこれが理由か。
    顔が赤く染まっているのは、夏の暑さのせいだけではないだろう。
    普段は無駄に威勢のいい少年が、自分を誘う時はこんなにもしおらしくなるのか。そう思うと、おかしさと可愛らしく思う気持ちで笑みが漏れそうになる。
    その健気さに応えてやりたい気持ちは山々なのだが……

    「悪いな、その日は仕事の予定が入ってる」
    「……そっか」
    そう告げれば、長嶋は分かりやすく気落ちする。まるでお預けを食らった犬のようだ。
    感情がすぐ態度に出るところは見ていて飽きないが、こうもあからさまに落ち込まれると流石に罪悪感を覚えてしまう。
    いや、日時が分かってるならもっと早く言え… という思いが無いわけではないが。
    頭の中で予定を確認する。その日の仕事は、多少の無理をすれば早めに切り上げることも可能だったはずだ。
    紙の切れ端に時間と場所を書き込み、それを長嶋に差し出す。
    「へ…?」
    「その公園の場所は分かるな? その時間に迎えに行くから、そこで待ってろ」
    待ち合わせ場所に指定したのは、九条館から少し離れた位置にある公園。遊具も少なく寂れていて、昼夜問わず人気のない場所だ。
    「遅くなるから屋台を見て回るのは無理だが、花火は少しなら見れるだろう」
    「……!」
    ぱぁ、と音が聞こえてきそうなほど、これまた分かりやすく表情が明るくなる。
    本当に見ていて飽きない男だ。
    「旦那、ありがとな!」
    少年は、夏の日差しのように明るい顔で笑った。



    待ちに待った花火大会の当日。はやる気持ちを抑えながら、何度も時間を確認する。
    胸がドキドキしている理由は、待ち合わせ場所の公園がやたら不気味な雰囲気だからではない。
    (へへ… 旦那、まだかな)
    約束をした時の様子からして、ワガママを言ってしまったのは自覚している。本当ならそんな幼稚さを恥じるべきなのだが、それよりも嬉しさが勝っていた。
    あの人が自分のワガママを受け入れてくれたことが、それを許される関係になっていることがどうしようもなく嬉しかったのだ。
    そんなことを考えながら待っていると、聞き慣れたエンジン音が聞こえた。
    公園の外に目をやると、真下の旦那の車が見える。
    急いで駆け寄るのは、いかにも楽しみにしてましたって感じがして恥ずかしい。だから、できるだけ平静を装った足取りで近付いた。
    「すまん、遅くなった」
    「別に、そんな待ってねぇよ」
    本当に、待つ時間は気にならなかった。胸がいっぱいで、そこまで気にする余裕がなかったから。
    そこまで口に出すのは流石に恥ずかしくて、足早に車に乗り込んだ。
    車内は冷房が効いていて涼しかった。外の暑さで火照った体に冷気が気持ちいい。
    「で、どこ行くんだ?」
    「ここから少し登ったところに広場がある。高台にあるから花火もよく見えるだろ」
    そんなことまで考えててくれたのか、と余計に嬉しくなってしまう。
    顔は赤くなってないだろうか。心臓の音が聞こえてたらどうしよう。
    そんな少女漫画みたいなことを考えている自分と反対に、恋人はいつも通りの涼しい顔をしていた。


    「それ、似合ってるな」
    「えっ」
    運転中の旦那が、急にそんなことを呟いた。
    それ、とは… 今着ている甚平のことだろうか。
    外は暑いし、せっかく花火を見に行くんだから着ていけ、と母親に押し付けられたものをそのまま着てきたんだけど…
    「そ、そうか? アンタにそう言われると、なんかムズムズすんな…」
    「嫌か?」
    「アンタがそういうこと言うの、珍しいと思っただけだ」
    真下の旦那が、人の見た目とか服装とか… そういうものを褒めたところは見たことがない。そもそも、あまり他人のことを褒めない人ではあるのだが。
    だから、素直に嬉しかった。なのに…
    「可愛い恋人が、自分のためにおめかししてきたんだ。男としては嬉しいだろう?」
    …と、いつものニヤついた顔で言う。
    あ、この顔は知ってる。オレをからかう時の顔だ。
    「べっ…!別にアンタのためじゃねぇよ!あ、暑かっただけだっての!」
    こうやってからかわれると、いつも言い返してしまう。素直にそうだと言った方が、この人は面食らうだろうと分かってるのに。
    恐らく顔が赤くなっているであろうオレを横目に、旦那は随分と機嫌が良さそうだった。


    しばらくして、目的地に着いた。
    そこは見晴らしのいい高台にある広場だった。広場と言っても寂れた雰囲気で、汚れたベンチがいくつか置いてあるだけだ。自分達の他に、人がいる様子もなかった。
    一人で来ていたら、少し不気味に感じていたかもしれない。
    だけど今は、真下の旦那と二人っきりという状況にドキドキしてしまって、正直それどころではない。
    「おい。花火、始まってるぞ」
    「…お、おう!」
    声をかけられて初めて、花火の音に気付いたくらいだ。かなり浮かれてんな… と自分に呆れる。
    旦那の隣に駆け寄って、空を見上げた。
    遮るものがない、視界いっぱいの夜空。そこで弾けては消えていく、たくさんの光。花火の弾ける音が耳に心地いい。
    しばらくの間、さっきまでの緊張も忘れて、目の前の光景に夢中になった。
    「…綺麗だな」
    「ああ」
    ちら、と旦那の横顔を見る。
    その表情は、いつもより穏やかに見えた。

    「……へへっ」
    「なんだ、いきなり」
    「旦那のそういう顔見れんの、今はオレだけなんだなって思ってよ」
    「…………」
    (な、なんで黙るんだよ…)
    なんだか急に恥ずかしくなって、目線を逸らす。
    すると、それを咎めるように「長嶋」と名前を呼ばれた。
    「…なんだ、よ」
    ち、近い。顔が近い!!旦那のやたら整った顔が至近距離にあって、いつの間にか顔に手が添えられていて、あ、これって、そういう流れ──
    「……っ、んっ…」
    触れ合った唇から、添えられた手から、熱が伝わってくる。
    一つの熱を二人で分け合っているような、そんな錯覚すら覚えた。
    「…んぅ、っ!ん、ふっ、」
    ぬるりとした熱い感覚と一緒に、舌が入ってくる。
    真下の旦那と恋人になってから、キスは何回かした。それも数えるほどしかしてないし、舌を絡めるような深いキスは…
    初めて、だった。
    上手なキスの仕方なんて分からない。ただ夢中になって、大好きな人と熱を絡ませた。

    唇を離すと、唾液が糸を引いてぷつりと途切れた。
    その光景を見て、なんだかすごくいけないことをしたような気持ちになる。
    いくら人がいないと言っても、誰か来るかもしれない場所で、こんな…
    …だけど、そんな理性を掻き消してしまうくらい、さっきのキスに興奮していた。
    旦那の手が、するりと頰を撫でる。
    「…無事に卒業できたら、これの続きをしてやるよ」
    そう言ってニヤリと笑う。
    ああ、もう。本当にひどい。
    こんなことをされた上でお預けされたら、アンタから離れられないじゃないか。元から離れるつもりもないけれど。

    「…アンタって人は、ほんと──」

    言葉の続きは、花火の音に掻き消されてしまった。
    でも、アンタなら分かってるんだろうな。そのニヤけた顔を見れば分かる。

    「──ずるい大人!」
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