「今回の成果は?」
「まったくないね。一体どこいったのアイツ」
ふてくされる五条に家入は肩をすくめるだけだった。学部が違う彼女も夏油は見ていないという。高校1年の時に家入と、その翌年、翌々年に後輩達にも出会えたのに、夏油の姿だけが見当たらない。
「夏油が隠れてるのかもよ。諦めてやれば?」
「やなこった。俺は今度こそ傑を逃がさないって決めてるんだよ」
「カワイソーだな」
家入は手をさまよわせて、ここが禁煙のカフェテリアだと思い出したようだった。舌打ちをしてぬるくなった珈琲を口に運んでいる。
「ガラ悪いのは硝子の方じゃん」
「舌打ちしたくもなるっての」
薄く眉間にしわを寄せる家入に五条が言い返そうとした時、二人のスマートフォンが同時に通知を告げた。
「灰原がグループチャットに動画共有してきた」
「傑の動画?」
「そこから離れろ。五条似の猫動画だって……あ、マジで似てるわ」
「ふざけんな俺の方が可愛いわ」
言いつつも、五条も画面をタップして共有された動画を開く。白いふわふわとした毛玉がごろごろと転がっていた。飼い主らしき手が腹を撫でても反撃ひとつしやしない。